北村が、凶行に及んだのは、新学期が始まって約一か月、ゴールデンウイークが明けたころだった。昼休みが終わる十分前、午後一の授業の時間を待つ里穂に、北村が声をかけた。
「華谷先生、ちょっと、話があるの。すぐ終わるから、会議室まで来てちょうだい」
森田に初めて犯された日も、こんな風に北村に呼び出された。里穂は、不吉な予感に表情を曇らせた。 北村に続いて会議室に入ると、里穂は目を見開いた。かつての担任したクラスの生徒、染谷雄星と原口宗介が待っていたのだ。
「あなたたち…何の用なの?」
「久しぶりだね、先生。僕らを捨てて、パパ達とよろしくやってるって聞いてるよ」
「…知りません、何の話ですか」
「とぼけないでくれよ。散々学校でハメまくった癖に」
「ほんとだぜ。校内売春していた里穂先生が偉そうに授業か。全く世も末だぜ」
「…北村先生、私、午後の授業があるので、もう失礼します。何のお話なのか、さっぱり分かりませんけれど、また別の機会にお願いします」
そのまま立ち去ろうとした里穂の手を染谷と原口は乱暴に掴むと、そのまま会議テーブルの上にうつ伏せに押し倒してしまった。
「やめなさい!何をするの!」
瞬く間に膝丈のスカートがめくり上げられる。ベージュのストッキングの下の純白のパンティを晒しながら、里穂は身を捩る。若い生徒二人は、ストッキングごとパンティを思いきりずり下げてしまった。両腕をテーブルの上で二人に押さえつけられているので、里穂はなす術もなかった。
「ご苦労様。そのまま押さえてて。後は私がやるわ」
背後から、北村の声が聞こえる。
「北村先生、一体何をするつもりですか!こんなことをして、理事長が黙ってな…」
「ね、言ったとおりでしょ?この女はすっかり理事長を骨抜きにして、学園を乗っ取ろうとしているのよ。あなたたちのお父さんからも、二人でグルになって大金を毟りとっているのよ。」
「違う!誤解だわ、違うの、信じて…」
「きっとあなたたちの大学進学の資金にも手をつけちゃったんじゃないかしら。とんでもない女だわ。罰を与えないと気が済まないわよね」
北村は、父親たちに美人教師を横取りされ、あげく家から大金を巻き上げられた若狼の憤りを利用し、その矛先を里穂に向けたのだった。
必死に首を左右に振り乱しながら、里穂はやがて尻の辺りに、見覚えのある冷たい異物感を感じた。
「そんな、まさか、こんなところで…」
肛門に突き刺さったノズルから、冷たい液体がアナルの中に流れこんでくるのを感じ、里穂はパニック状態に陥った。北村は思いっきりシリンダーを押し込んだので、浣腸器はあっという間に空っぽになった。
肛内に流入した液体が早速腸壁に染み入る。慰安旅行で散々味わわされ、その後も何度か会員達のリクエストで経験していたが、この日の感覚は、一味違っていた。抽入された液体は三百CCほどであったが、刺すような腹痛と、腸が示すパニック反応は、これまで経験したことのないほど激しいものだった。
(なにこれ、こんなの…耐えられない)
ふと時計を見上げると、授業開始までもう五分を切っている。里穂は、深遠な恐怖を覚えて、北村に哀願を繰り返した。
「こんなの、あんまりです。お願いですから、もう、もうおトイレにいかせてください」
「バカなの?わざわざあんたに気持ちよく便秘解消してもらうためだけに、こんなことするわけないじゃない。あなたがこのまま授業をやり通したら、私あなたのこと認めてあげるわ。せいぜいがんばりなさいよ。ほら、遅刻するわ、立たせてあげて」
雄星と宗介に挟まれ、里穂は無理やり教室に向かって歩かされた。一歩ごとに、腹の中の液体がタプタプと攪拌され、里穂を苛んだ。腋の下を嫌な汗がジトっと湧き出てくる。
(無理よ、耐えられない、このまま一時間だなんて…)
里穂の体内で暴れまわっているのは、食用酢の原液だった。酢酸の成分は、グリセリンの浣腸液よりも、鋭角に腸壁を削るような感覚をもたらす。女子トイレの脇を通り過ぎるとき、中に駆け込もうとする里穂だったが、雄星と宗介に行く手を阻まれた。
「往生際が悪いわね。こうしてあげようか?」
北村が、意地悪くスカートの上から下腹部をグイ、グイと押しこむ。
「やめて、押さないで、むぅぅん、も、漏れちゃう…」
結局、トイレに行くことは許されず、国際科の一年E組の生徒の待つ教室の扉までたどりついたころには、既に定刻を二、三分過ぎていた。三年生の生徒二人組に肩を抱きかかえられながら、押し問答をする里穂だったが、このままでは誰かが廊下にでてきてしまうだろう。それに、これ以上の遅れは、許容できるものではない。
「ふふふ、しっかりお尻の穴締めないと、あなた人生お終いよ。途中で逃げだしたら何回でもやらせるわよ。次は本数二倍にしてあげるから。せいぜいがんばりなさい」
嫌味たっぷりな北村の声を背に、里穂は、覚悟も定まらないまま、教室に足を踏み入れた。
「…遅くなって、ごめんなさいね。じゅ、授業を…はっ、はじめ、ます」
女教師の様子がおかしいことは、誰の目にも明らかであった。額にはびっしょりと汗が滲んでおり、黒髪のほつれ毛がぴったりと張り付いている。教科書の文法を開設したり、発音の注意点を述べたりする間も、言葉の合間合間に、何かを必死で耐えるような沈黙がさしはさまれる。さらに、その頻度は、時を追うごとにまして、いよいよ息も絶え絶え、という風情になってきた。
「あの、先生、顔色が悪いようですけど、大丈夫ですか?」
「無理しないで、保健室で休んでください」
入学してほんの一か月ではあったが、里穂は早くも生徒達に慕われていた。優しい声をかけてくれる生徒はありがたかったが、時折北村が廊下から教室の様子を伺うように覗き込んでくるのが目に入ってくる。監視されているのだ。
「ごめんなさいね、心配かけて。でも、だ、大丈夫だから。授業、つ、続けましょう」
腸が、ひとりでに蠢き、まるで蛇のような生き物になったかのような錯覚を覚える。津波のような便意が里穂の意識を遠くさせる。授業参観日に、媚薬を盛られた時のことが思い出される。囚人監視の前で、醜態を晒す自分を想像すると、胸が締め付けられるような苦しさを覚えると同時に、膣の奥が、火を灯されたように熱くなるのを感じる。
(負けちゃだめよ、こんなことで、終わりにしたくない…)
だが、何度も浣腸責めの被害にあっていた里穂は、自分の限界点が、嫌と言うほど分かっていた。意志の力では制御し得ないような、肉体の限界が確かに存在しており、それがもう眼前に迫っていることが自覚される。
丁度、廊下に北村がいないことを確認すると、里穂は意を決したように言った。
「ごめんなさい、続きは、自習にします。ほんとに、ごめん…」
ふらふらと教壇を降りて、教室の扉を開けようとしたその時、里穂は「あぁ!」と悲鳴をあげてしまった。引き戸が、開かないのだ。
(そんな、どうして!)
北村が、教室の前を立ち去る際に、細工をしていったのだが、引き戸とレールの間にモップが斜めに立てかけられていた。里穂には、何が起きたのかわからず、パニックに陥った。
だが、絶望している暇はない。今すぐ教室を脱出しなくてはならないのだ。教室の後ろ側の扉を見遣った。少し隙間が空いているように見える。どうやらあちら側からなら、外へ出られそうだ。だが、そうするには何人もの生徒達の列の間を通り抜けていかなくてはならない…。
一歩一歩と進むごとに、濁流が肛門を押しひろげようと水圧を増している。生徒達の間のざわめき声も、里穂の焦燥を掻き立てた。駆け足で逃げ去りたいが、決壊寸前の尻がそれを許さない。恐る恐る忍び足で扉に向かわざるを得ないのだ。道のりは、ほとんど永遠のように長い。
(耐えるのよ、負けちゃだめ、絶対に…)
パンティもストッキングも奪われ、膝丈のタイトスカートの下は、何も纏っていない。今、崩壊してしまえば、そのまま汚物が教室を汚すだろう。愛すべき生徒達の真ん中で、そんな醜態を晒すことを想像すると、卒倒してしまいそうになる。
腹痛に耐えきれず、つい膝に手をついて立ち止まる。そうこうするうちに、腸は毒液を吐き出そうと、喚きちらすように鳴っている。里穂の身体に何か異変が生じていることは、生徒達の目にも疑いようがなかった。
もはや、生徒達はヒソヒソ話もやめて、里穂の挙動に釘付けになっているので、教室は静まり返っており、里穂の腸鳴りだけが響き渡っていた。
(聞かないで、聞いちゃいや…)
再び歩みを進めようと前方を見遣ると、まだ自分が扉までの道のりの半分程度しか進んでいないことに気づき、愕然とした。
(まだ、こんなに遠い…もう、無理だわ。これで、お終いだわ、ぅぅぅぅ)
里穂は中腰の姿勢のまま、天を仰いだ。気絶しそうなほどの腹痛にもかかわらず、羞恥の意識だけははっきりと覚醒している。教師の立場で、クラスの生徒全員のまえで、脱糞する姿を晒すのだ。里穂はもうすすり泣きを始めていた。
「あぁ!みんな、許して、ごめんなさい、先生、もう、ひ、ひぃぃぃ…」
ギュルギュル!という醜悪な音色を腹の中から響かせ、里穂はついに崩壊した。散々腸内を荒らしまわった酢酸液は、宿便を道ずれにして、茶色く染まりながら床を叩きつけた。ほどなくして、半固体半液体の汚物が、腿を伝った。時が止まったような静寂の中、里穂は十数秒間の間、涕泣と共に排泄を演じた。
やがて、滝のような流れがやむと、教室内にどよめきが響き渡った。女子生徒たちの悲鳴が、里穂の心を抉った。腹の中の荷物を全て吐き出すと、里穂はその声に追い立てられるように、フラフラと教室を後にした。