「さーて、ここから、欲求不満の人妻を追い込んでいくぞ。有田、お前は俺のやり方を真似してみろ」
「こ、こないで……」
 五条が口元をちづるの耳の裏あたりに寄せて、耳たぶをなめ上げた。そうして、それとシンクロしながら、中指の腹で、左の乳首をすっと、軽く撫でた。
「へへ、わかるか?前戯はよぉ、いかに女の想像力を掻き立てるかの勝負なんだよ」
 耳たぶを唾液まみれにしながら、五条は舌を這わせ、時折それを吸い上げた。他方、指先から繰り出される乳頭への刺激はあくまで軽かったが、ちづるの意識の中で、二つの地点を結びつける役割を果たした。つまり、これから乳首を甞めしゃぶられる、そのことを予感させるのだ。
「あ、あんっ……」
 艶っぽい声が漏れた瞬間、ちづるはハッとした。口元を覆いたかったが、ネクタイの拘束は依然として解かれていない。
「いやー、五条さん、さすがですね。奥様、もうメロメロじゃないですか」
「はは、まあな。ほら、お前もやるんだよ」
「も、もう、いい加減に……む、むぅぅ」
 有田の口と指先が襲ってくるのと同時に、五条に唇を奪われた。口を閉じようとするところを、舌を差し込まれた。子分による愛撫を後景へと退け、責め手の主旋律はあくまで自分のパートだとでもいうかのように、わが物顔で人妻の口腔内を蹂躙していく。
頬の裏の肉の感触を楽しみ、歯茎の裏にまで自らの唾液を塗り込む。さらには、嫌がる人妻の舌を吸い出して、口の外まで引きずりだすことまでする。まるで、カラスがスズメのヒナを嬲りものにするかのようだ。
 ようやく五条が唇を離すころには、ちづるはもう肩で息をしていた。
「へへ、もう目もトロンとしてきやがったな。そろそろ、こっちを遊んでほしくなってきたころだろ?」
 五条の左手が、割れ目に食い込んだパンティを縦になぞった。
 ちづるが総身を、ブルっと震わせると、二人の男は顔を見合わせて笑った。
「オマンコお預けされて、たまらなかったか?そうだろ?」
 サイドヘアをかきあげながら、五条が耳元でささやいてくる。
「ち、違うわ。か、勘違い、しないで……」
 大きくかぶりを振って否定する間も、五条の指は、湿りきった女の船底部分にソフトタッチを繰り出す。
ちづるの両足に、思わず力が入る。閉じ合わせようとするが、男二人の身体がストッパーになっていては、叶わない。絶えず送り込まれる快楽の電流の前に、わが身があまりに無防備であることを思い知らされて、ちづるは天を仰いだ。
「なあ、上流の婦人らしく、上品におねだりしてみろよ。ちづるのオマンコ、ほじくりまわしてくださいまし、ってな」
「ば、ばかにしないで」
 ちづるは顔を真っ赤にして怒ったが、そこに有田も便乗してきた。
「ははは!それは傑作ですね。自惚れきった国会議員夫人のなれの果てって感じで。ほら、奥様。早く、言ってくださいよぉ?」
 催促するように、有田がちづるの乳房に吸いついた。しこりきった敏感な乳首への責めは、ちづるを悶絶させた。それでも屈辱のセリフを口にすることは断固として拒否していると、今度はその乳首に軽く歯を立てはじめた。
「い、痛いっ!やめなさい!ねぇ、やめてっ!」
「おい、ちづる、ちょっと大げさだぜ。ほんとは痛いんじゃなくて、気持ちいいんだろ?隠さなくたっていいんだ。素直になれよ」
「ち、違う……そんなんじゃ……」
「まあ、痛いのが本当だったとしてもだ。お前には文句を言う資格はねぇんだぞ?有田はお前に、一番気持ちのいい射精の瞬間に逃げられたうえに、ビンタまで食わされたんだ。まずは昨日の件に関して、謝罪が必要だな」
「お、お断りです!そんなこと、絶対に、い、いいいいいっ!」
 有田が顎を左右に動かしながら、ギリギリと乳首を虐める。抵抗する夫人に屈服を迫っているのだ。
「このままじゃあ、お前のキレイな乳首ちゃんに、傷跡が残っちまう。これから仲良くやっていくためにも、一回ワビいれとけよ、な?」
 和解する意思など一切ないのだが、痛みに耐えかねて、とうとうちづるは陥落した。
「た、叩いたりして、ごめんなさい。私が、……悪かったわ」
すると、ようやく有田は歯を立てるのをやめ、今度は唾液たっぷりの舌先で乳頭を丁寧に舐めあげ始めた。
「あ、あふぅぅん……」
 昨夜も、同じ男に胸を舐めしゃぶられたのだが、自らの身体の反応が、まったく異なっている。五条の指が、びしょぬれになったパンティを、絶えず肉割れに押し込むようにしているせいもあるが、ここまでの手の込んだ責め手に、性感を炙りだされていることは、否定しがたかった。
「ほら、次はオマンコいじりのおねだりを聞かせろよ」
 ちづるは首を左右に振りたてて拒絶するが、やがてビクンと腰を浮かせた。五条の指が、パンティ越しに肉の『芽』を掘り当てたのだ。
「くくく、お前の急所はここか?ぷっくり膨らんで、立派なクリトリスじゃないか。旦那にかわいがってもらったのか?」
「……」
とっさに否定することができなかった。実際、ちづるの陰核を開発したのは、夫の壮平だった。壮平は専ら舌で、ちづるのそれを愛した。だがもちろん、そんな夫婦の秘密を、卑劣漢に開示する気にはなれない。
「ちがうんですか、奥様?じゃあ、なんです?ご自身で、開発されたんですか?あははあは」
 急に乳房から唇を離した有田が、横やりをいれてきた。裏切者を睨みつける眼力はしかし、すぐに霧散してしまった。膨張した肉芽を、五条の指がパンティの上からつまみあげたのだ。
「や、やめて、もう、しないで……」
「おうおう、こりゃずいぶんなデカクリだぞ。パンツの上からでももっこりしてやがる。貫禄たっぷりだ。」
「ううう、もう、言わないで……」
夫の壮平との間で育んだ、愛の結晶のようなその部位を、揶揄いの対象にされるのが耐えられない。
 認めたくはなかったが、クリトリスとパンティの間で生じる摩擦が、じりじりと自分を『あの感覚』へと追い立てている。
男たちの卑劣な手管に抗おうと、夫の顔を思い浮かべる。しかし、瞼の裏に浮かぶのは、夫の顔ではなく、その頭頂部だった……

夫婦の寝室で、壮平が自分の股の間に潜り込んだ、幾多の夜。延々と舌や指で愛撫してくれた記憶がフラッシュバックしてくる。
今この瞬間、絶頂までもっていかれたら、そんな幸せな記憶までもが汚されてしまう。
焦りを募らせるちづるの耳元に、悪魔が囁いた。
「なぁ、ちづるちゃんよぉ。俺には、ぜーんぶ、お見通しだぞ」
「何が、ですか……くぅ……意味が、分からないわ」
「お前、このままイクつもりだろう?」
「ば、バカなことを……ありえないわ」
 五条の左手の中指の先は、細かい、高速の振動を肉芽に浴びせ続けている。濡れそぼった薄布は、その刺激を和らげるどころか、むしろ増幅さえしているように思える。きっぱりと否定したちづるだったが、その実、はっきりと自覚していた。このままでは高みに吹き上げられてしまうと。
「こんな雑な前戯で嫁さんが別の男にイカされたと知ったら、あの野郎もさぞかしショックだろうなぁ?」
「……もう、止めて、しないで。む、むふぅぅん」
 狡猾な左手の振動は維持しながら、右手で人妻のサイドヘアをかき上げ、五条は悪魔の取引を持ち掛けた。
「ああ、いいぜ。だが条件がある。お前の言葉で、俺を口説いてくれよ。五条さんのことが好きで、オマンコハメハメしたくてたまらないわ、ってな」
「ふ、ふざけるのも、いい加減にして!そんなこと絶対に……」
 撮影されていると分かっていて、そんな台詞を吐けるわけがないが……
「心配するなって。カメラのマイクには聞こえないように、俺の耳の側で囁いてくれればそれでいいんだって」
 ちづるの心は揺れた。嫌悪の対象でしかない男に求愛する気になどなれそうもない。だが、このままあっけなく痴態を晒し、記録されれば、それをもとに強請られるに決まっている。無理矢理に強姦されるところならまだましだ。こんなにも簡単に、自分の肉体が貞操の鎧を脱ぎすててしまう、その決定的な瞬間なのだ。気持ちは、固まりつつあった。
 首をひねり、口元を五条の右耳に寄せる。
「へへ、いい子だぞ。なるべく、エロく、情熱的に頼むぜ」
「ご、五条さん……わたし、あなたのことが、す、好き。だ、だから…だ……抱いて、ください……」
 五条は、目を閉じ、血を吐くようなちづるの『求愛』を耳で味わったが、やがて大きなため息をついた。
「おい、有田。パンティひん剥いて、お豆ちゃんにしゃぶりつけ。いきなり激しくするなよ。なに、小鳥のさえずりみたいなクンニだって、落ち着いてつづければ、今のこいつなら楽勝でゴールまでもっていけるんだからな」
「な、なんですって!」
「ん?全然エロくも情熱的でもなかったから、失格だ。それでもクンニで気をやるんなら、多少かっこはつくだろが」
 雑な、パンティ越しの愛撫で気をやるよりは、マシだろう、感謝しろ、とでも言いたげだ。ちづるには受け入れがたい仕打ちだ。
「約束が、違うわ!卑怯よ!あ、ああ、やめて!放して!放しなさいっ!」
 下半身を窮屈そうに捩じっても、男たちの手をかわすことはできない。無惨にパンティをむしりとられ、元秘書の頭部が股座に潜りこんできた。
股間に口をロックオンされてしまうと、ちづるにはもう打つ手がない。『留め具』が外れたことで、右脚は自由にはなったが、それを閉じ合わせたところで、何の防御にもならない。そればかりか、今まさにクンニリングスの嵐を浴びせてこようとする男の頭部を、愛おしげに抱きかかえるような格好にしかならないのだ。

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