ネクタイで戒められた手首は、ソファの背もたれの裏に回された。その端は、有田の左手が握っている。
両足の前に男二人が留め具のように腰を下ろしたので、肉感的な腿はMの字に開かれたまま固定される。三十九歳の人妻はその淫猥なポージングを、タブレットのカメラの前に晒している。ズタズタにされたパンスト隙間から、パンティのクロッチ部分にうっすらと浮かんだシミに、クッキリとピントが合っている。羞恥の中心をロックオンされたようで、ちづるは息をのむ。
「へへへ、見られるだけで、大興奮ですか?ヒクついてきましたねぇ、おくさまぁ?」
「そ、そんなわけ、ないでしょ。いい加減なこと、言わないで……」
否定しても、語尾は小さくかすれてしまう。眼前のデバイスが、動かぬ証拠なのだ。
五条と有田に凝視されるだけではない。カメラで納められた映像を、不特定多数の第三者に見物されるのではないか……
そんな想像をすると、自然と股間が不安と緊張で強張ってしまう。何も淫らな期待を抱いているわけではないはずなのに。白布の奥の性器がひっそりと息づいてしまうのだ。
「こうするとよぉ、もーっとよくわかるぜ」
五条の手が、パンティの腰の部分にかかった。脱がされる、そう思ったが、男の手は逆方向に動いた。パンティを腰の上の方に無理やり引き上げたのだ。必然、クロッチ部分は割れ目に痛々しく食い込む。
「ほんとですねぇ。うわぁ、なんか別の生き物みたいじゃないですか」
「くっ……」
膣の中に食い込んだ生地は、一層分泌液を吸い込んで、重く、鈍く、光る。肉割の周囲のこんもりとした肉が、白布の左右から飛び出すようで、淫猥だ。これが、自分の身体の一部だなどと、信じられないくらいに。
「なぁ有田。次の一手、どう攻めるのがいいか、お前わかるか?」
「えっ、そりゃあ、もうこの濡れ濡れパンティ脱がせて、手マンですか?」
「やれやれ。やっぱお前、なんにもわかっちゃいねぇ。挿入前に、しっかりトロトロにしておかないから肝心なところで逃げられんだ。攻めずに攻める。これが大事なのさ」
釈然としない表情の有田を尻目に、五条が続ける。
「今、ちづるの頭の中は、どんなふうにオマンコ弄り回されるか、そんな想像でパンパンになってるとこよ。だからこそ、あえてだ。あえて、そこは放置するのさ」
「なるほど!焦らしプレイ、ってことですね。とすると、次は」
五条がにやりと笑った。その右手には、再びあの裁ちバサミが握られていた。ちづるのニットセーターの首元を引っ張り、その肩先からブラ紐を摘みあげると、バチン、と両断した。
五条に操られたハサミが空中で威圧するように開閉する。じっとしていないとケガをするぞ、というかのようなその威圧感に、ちづるは身を固くした。瞬く間に、反対側の肩紐も断ち切られた。ブラのホックは、いつの間にか、どさくさ紛れに外されていた。
男二人の手がライトグレイのセーターの首元から、いともたやすくブラを引き揚げてしまうのを、ちづるはただ、見ていることしかできなかった。
ブラジャーを奪われて、セーターの毛羽だった感触が乳房に触れる。無力感とともに、甘い、敗北の予感が頭の中を満たした。
「さて、このデカ乳、どう料理するか、だな」
五条は、その重みを測るかのような手つきで、閉じた裁ちばさみの背の部分で乳房を下から押した。ちづるは思わず口を開いた。
「もう、それは、しまってください……」
「そうはいかないな。まだ、こいつには仕事をしてもらわなきゃいかねえ」
「あ、ああっ!」
ハサミの背が、ニット越しに乳頭部分を掠めた。冷たい金属の感触が、布越しにもはっきりと伝わる。それが瞬間的に、むっくと立ち上がるのを感じた。狡猾な二匹の獣の目にも明らかだった。
「へへへ、ずいぶん敏感なパイオツじゃないか。有田、お前に入念におしゃぶりされて、乳首の感度がよくなったのかもしれんなぁ」
「そ、そんなこと、ありえませんっ!」
それは、唐突にもたらされた冷感と、刃物に対する恐怖がもたらす生理現象でしかないはずだ。
「そうか?じゃあ、もうちっとよく観察してみょうじゃないか」
ハサミが小さく開くのが目に入ると、ちづるは叫んだ。
「そんな、やめて!切らないで!」
すでにスカートも切り裂かれてしまった後だ。事務所から自宅までは徒歩圏内だが、それでも四、五分はかかる。このままでは、帰れなくなってしまう。
色を失ったちづるの表情に、五条は上機嫌だ。
「遠慮すんなって。乳首ちゃんも窮屈そうだ。少し息をさせてやろうや」
薄手のニットに包まれた乳房は、その頂をはっきりと尖らせていたので、狩人たちは、空襲すべきエリアを容易に特定できた。有田が助太刀するように、乳頭周辺の生地を摘みあげると、その円錐型の底辺部分を五条のハサミが捉えた。瞬く間に、反対側にも同じ処置を施す。唐突に開いた空隙から、ぷっくりと膨らんだ乳頭がきまり悪そうに飛び出てきた。
「ああ、なんということを……」
敏感な蕾が外気に触れる。四つの眼球と、無数のカメラに見つめられている。意識がその尖端に向くほどに、凝固していく。
「なあ、教えてくれよ、ちづる。お前、なんでこんなに、乳首勃起させてんだよ?」
五条は、ハサミの閉じた刃の部分を握り、柄の部分をマイクに見立てて、ちづるの口元に寄せた。
「し、してませんから、そんなこと……」
「素直じゃねえのはいけねぇな。こうしてやる、おらぁ!」
ニットに空いた小さな穴を、五条の両手が襲った。あっという間に、その穴は熟れた乳房全体を露わにするほどに膨張した。有田もそれに続いて、反対側の乳房を剝き出しにしてしまった。
「ああ、なんということするのっ!帰れなくなってしまう……」
「おっと、そうだなぁ。でも心配するな。素っ裸でうろついても大丈夫なくらいの夜更けまで、俺たちが遊んでやるからよ、くくくくっ」
獲物がすっかり狼狽えているのがよほどうれしいらしく、五条は破顔した。百パーセントの悪意からくるその笑顔に、ちづるは身震いした。
五
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