左右の乳房を入念に舐めあげ、しゃぶりあげた末に、有田の右手はちづるの股間を襲った。そこに、かすかな湿り気を発見すると、有田はちづるの上に覆いかぶさってきた。
「やめなさい!これ以上は、絶対にさせませんからっ!」
抵抗する夫人と単なる強姦魔と化した有田の二人は、やがてソファから転がり落ち、フロアの上で絡まりあった。
いつの間にか下半身をすべて露出させていた有田が、ちづるの腿を掴んで、自らの腰を割り込ませ、ついに思いを遂げた、その瞬間以後の様子も、カメラに収まっていた。
しかし、どのアングルからも、ちづるの顔は確認できず、有田の背中や尻、快楽を貪る締りのない表情ばかりが大写しになっていた。
「あーあ、本当に腹が立つぜ。元キャスターで汚職議員夫人の高峰ちづるの、その本番映像が手に入るチャンスだっていうのに、ヘマをしやがって。やるときはソファのうえでやれってあれほどいったのによぉ。超特大お宝映像になるはずだったのに、台無しだぜ」
 舌打ちしながら、五条が有田の頭に軽く拳骨を見舞った。この盗撮のシナリオを描いたのが五条だったのか、有田だったのかは判然としないが、いずれにしても撮影の手筈は五条が整えたのだろう。自分の目を盗んで事務所に忍び込み、二人で隠しカメラを設置していったのか。ちづるは、嫌悪感で身震いした。
「いやー、すんません。つい、カッかしてしまって。カメラのことも全部すっとんじゃってました」
「ちっ、お前は気持ちいいことだけして、なんの成果も上げやしねぇ。なぁ、お前、俺に代金払いやがれ」
 有田がぺろっと舌を出していう。
「でも五条さん、僕だって、不満はあるんですよ。あんな情けない形でフィニッシュさせられて、これはトラウマものですよ。奥様には、慰謝料を請求したいくらいです」
ちづるは、もう耐えられないと叫び、有田の頬を打とうとしたが、五条の手であっさりと取り押さえられた。
「ふふ、奥様、昨日のようにはいきませんでしたね」
 
 昨夜、床の上に組み敷いたちづるに対して挿入を遂げた有田は、息をつく暇もなく高速のピストン運動を繰り出した。湿りは十分ではなく、またしばらく男を迎え入れていなかったちづるは痛みを叫んだが、有田は一顧だにしなかった。それでも、熟れた人妻の膣は次第に杭打ちに馴染んでいった。
「へへ、奥様、僕たち、ずいぶん相性がいいでしょう?ねぇ?ああ、感激だなあ。もう、このままぶちまけていいなら、もう死んでもいいくらいだなぁ」
 タブレットは情事の記録を流しつづけ、呆けた顔の大写しになっていた。
 ちづるは、膣内射精の恐怖に青ざめた。卑劣な手段で女を組み敷くような男が、射精直前に凶器を引き抜いてくれることなど、期待すべくもない。必死で懇願したが、有田は不気味な笑みを浮かべ、時折大げさな咆哮をあげてちづるの不安を煽るばかりだった。
 夫人のうえで腰を振る有田も、次第におしゃべりが減り、眉間に深い皺を寄せながら、ピストンのピッチを加速させてきた。ラストスパートに向かう男の体の緊張を感じた。男の意識は自らの下半身に集中しているせいかだろうか。夫人の両手首をつかんで床の上に押し付ける、その指には、握力が抜けていた。ちづるは、これが最後のチャンスだと力を振り絞った。有田の手を振りほどき、顔面に強かなビンタを食らわせ、怯んだすきにその胸板を突き飛ばして、結合を解いてしまった。
 その時分にはもう有田は『臨界点』を超えてしまっていたようで、ドスンと床に尻もちをついたまま、身震いとともに、滑稽な姿で射精を演じることになった。タブレットの液晶に映った自らの醜態にため息をつきながら有田が口を開いた。
「僕はねぇ、奥様とのせっかくの情事の記録が、こんな痛い終わり方なのが、耐えられないんですよ。だから、僕のアイデアを聞いてください。我々三人、みんながハッピーになるプランですから」
 有田の言い分は、ちづるとの本番行為の撮影をやり直す、というものだった。局部までしっかりと映った鮮明な映像であれば、たとえ高峰壮平の事件が下火になったあとでも、『ネタ』としての価値は維持されるだろう。 
「ちづるちゃんは、お金に余裕ができたときに、この映像を一式、買い戻せばいい。まあ、値段については、そうだなぁ、そのとき改めて相談するとすればいいさ。期限は、特に急ぎはしないが、買い戻すまでの間、利息代わりに時々遊ばせてもらうぞ」
 
 結局は、この男たちは自分を強請りに来たのだ。痴態を収めた映像の暴露を回避する代わりに、より破滅的な物証を差し出すことを求められている。そうして、延々と身体を弄ばれるのだろう……
ちづるは、選べなかった。どちらの道にも、自分が、いや家族が幸せに生きる姿が想像できないのだ。すると……
「なぁ、俺はせっかちなんだよ。配信の用意はもうできているんだ。俺がSNSでこのリンクをばらまいた瞬間、一気にバズるぜ」
五条の手の中のスマホの画面が、SNSの投稿画面の下書き状態になっていた。サムネイル画像には、悩まし気なちづるの表情がアップになっている。動画のリンクだろう。右下の紙飛行機のアイコンをタップすれば、秘書の前でストリップに興じ、乳房を吸わせる女として、世界は自分を認識するのだ。
「……おっしゃるとおりに、しますから。それを、押さないで!」

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