三人掛けのソファの真ん中で、ちづるは左右を二人の男に挟まれた。
「隠しカメラの引きのアングルじゃあ、迫力が出ねぇ。やっぱ真正面から見上げるアングルが一番股間に来るのよ」
AV監督気取りの様子でひと通りのウンチクを並べると、五条はタブレットのカバーを折りたたみ、スタンド代わりにしてティーテーブルの上に設置した。インカメラがちづるの膝から顔面までを収め、画面はそのすべてを映し出す。
このままでは、昨夜以上の恥辱に見舞われることは確実だ。そうしてその様子を撮影される……現状を打開する方法を考えようとするが、画面隅の『REC』の赤い文字に心を搔き乱され、思考が定まらない。
「おい、ちづるちゃんよぉ、俺とのセックスは有田みたいな軟弱なヒョロ野郎のとはモノが違うぞぉ、覚悟しろ?」
ちづるの黒髪に指を絡ませながら、五条が耳元脅し文句を吹き込む。ちづるは、平静を装うが、不安で、ロングスカートの膝頭あたりの生地を握りしめてしまう。
だが、自分を挟撃する二人の男の攻め手は、不気味なほどスローだった。肩先や二の腕や、髪を撫でたりはするものの、乳房や局部には触れられていないちづるは、困惑した。カメラをセットしたらすぐに、押し倒され、衣服を剥がれ、力づくで犯されるものと思っていた。
「脚をM字にがばっと開いて、自分で持っていろ」
ちづるの戸惑いながらの緩慢な動作にも、五条はイラつく様子も見せない。お前をいたぶる時間は、たっぷりある、とでも言うような余裕だ。
ソファの上で、M字開脚が完成した。黒のパンティストッキングに包まれた腿に、自身の指が食い込む。夫人の股間は垂れ下がったロングスカートの端でかろうじて隠されているのみだ。
次の瞬間、五条の毛深い手がスカートの端を掴みあげると、それをちづるの口元に強引に押し込んできた。
「む、ぐふぅっ……」
突然の強襲に、ちづるは目を見開いて怯えた。
「そのまま咥えていろよ。余計な口ごたえはいらねえからな」
自らの腿を掴み、捲れたスカートの端を口で咥える……無理やり裸に剥かれるよりも一層ひどく、女の尊厳を削る攻め手だ。
「さて、有田よ。我ら下賤の民の手で、議員夫人様の高貴なオマンコ様に奉仕させてもらおうぜ」
ストッキング越しに、二人の男の手が、膝頭と腿の付け根の間を這いまわりはじめた。
有田の指は産毛をなぞるかのように繊細だ。対照的に五条のそれはもっと威圧的で、敏感な肉溝の周囲の肉を指圧したり、摘まんだりして、ちづるを怯えさせた。
(ああ、変になってしまう……)
自分の性器の存在を強烈に意識させられる。いつ、どんな形で男たちの指が、その秘めたる部位に襲いかかってくるのか?想像せずにはいられない。いつしか、蜜部の奥が熱を帯びる。
どっちつかずの悩ましい均衡を、五条が破った。その指先が、ちづるの『船底』の部分をスッとなぞった。
「へへへ、これは大油田の発見かぁ?トロトロのが湧き出してきているじゃないか」
五条は、指先をテーブルのうえのタブレットの、カメラの部分に近づけた。そうして中指と親指を擦り合わせ、そっと離した。指の腹と腹の間に、透明な糸が、吊り橋のように伸びた。
「もう、いやっ!」
ちづるは、小さく叫んだ。己の肉の反応を愚弄されるのに、堪え切れなかった。口元からロングスカートの端が落下し、再び股間を隠した。その瞬間だった。五条がちづるの頬に平手打ちを浴びせた。乾いた打撃音が、事務所に響き渡った。
「何を……」
事態が、すぐには理解できなかった。物心ついてから、暴力を、それも顔面に受けた記憶など、一度もなかった。
「おい、お前。言われたこと以外はするんじゃねぇよ。オマタがん開きにして、口でコレ咥えていろと言ったろ」
以前自分に言い寄り、さらにはセクハラまがいのボディタッチまで仕掛けてきた、この卑劣漢が、今度は暴力行為にまで及んできた。このまま負けているわけにはいかない。ちづるは、キッと五条を睨みかえした。
だが、暴漢が大げさに右手を振りかぶって、二発目の打擲の構えを見せた瞬間。ちづるは目を閉じ、身を強張らせた。
しばしの静寂ののち、ごわついた手が頭頂部を撫でてきた。
「なあ、ちづるちゃんよぉ。俺だってお前を殴りたくなんてないんだよ。大人しく、素直にアヘアへしてくれりゃあよぉ、撮影だってすぐに終わる。ちっとは協力してくれないかぁ?」
暴力と脅迫で女の抵抗を抑えて、おまけに性的にも服従させようとしている。ちづるは憤怒に震えながらも、要求に応じる他なかった。
「なあ、目はしっかり開けてよぉ、目線はカメラに向けておけよな。お仕置き喰らった議員夫人様が、心を入れ替えてアへ顔晒すところ、しっかり記録しておきたいからよ」
あなたって、ほんとうに最低……そんな言葉を吐き捨てたかったが、スカートの端を咥えたままでは、声を発することもできない。せめて、気丈な表情だけは崩すまいと心に誓って、ちづるはタブレットの端の、小さなレンズの円形を睨みつけた。