『神楽荘』での慰安旅行を経て、『華谷里穂先生を囲む会』の会員は一気に八人へ増加した。里穂は会員の要望に応じて、平日の日中であればいつでも女体を差し出すことが義務付けられた。会員達は、一日授業二コマ分の間、女教師を貪る権利を与えられている。コンドームの着用さえ遵守すれば、ほとんどなんのNGプレイも設けられていなかった。
プレイは、付近のラブホテルを利用するか、あるいは校内の特定の場所を利用することになっていた。PTA懇談室の他、森田からは体育教官室と水泳部部室、あるいは授業のない時間帯のプール、南野からは物理実験室がそれぞれ徴用された。もっとも、会員達の多くは、一千万の会費の捻出に四苦八苦しており、ホテル代すら惜しんで校内でのプレイを好んだ。
「あーぁ、どうして私があんたのマネージャーみたいなことやらされなきゃならないのよ、まったく頭きちゃうわ」
会員達の希望日とプレイ場所を調整するのは、北村の役割となった。空き時間には、里穂に雑用をさせるなり、あるいは身体をいたぶるなり、好きにしていい、という話だったのだが、一千万円の会費の元を取ろうと、会員達は足繁く学園を訪れたので、北村の自由になる時間はほとんどなかった。
「あ、あの、来週は、その…あの日なのですが…」
「ん?ああ、生理でしょ?聞いてるわよ。それがどうかした?」
「えっ…ですから、この週に予約が入っているのは、ちょっと」
「生理でもやれることはあるでしょ?あなた、後ろの方も開業したって聞いてるわよ。生理中は、特別にアナルセックスOKってことで理事長から指示されてるし。会員さんたちもそのつもりで予約入れてきてるんじゃない?」
「そ、そんな…」
「あ、そうそう。この国光さん、って人。生理中に前で普通にセックスしてみたいんだって。ずいぶん変わった趣味の人ね、ふふふ」
国光は、アナルセックスに飽き足らず、さらに変態性を剥出しの要求をしているらしい。
「プールのシャワー室なら血まみれになっても問題ないだろ?里穂先生には学園の制服を着させてくれ。へへへ、ロストバージンの再現をやりたいんだよ!そうだな、髪型も高校生っぽい感じのポニーテールかなんかにしておいてくれ」
里穂は、権田に対して、必死に許しを乞うたが、会員のリクエストは絶対だと言われ、泣く泣く処女喪失のイメージプレイに応じさせられたのだ。
「こ、こんなこと、もうやめてください、国光さん!」
「あんまり大声出すと誰か来てもしらないぜ」
「うぅぅ、あんまりです…」
「さ、観念しろ。ワシに処女を捧げるんだ。ほれ、ほれ!」
「ひ、ひぃぃ、痛い、痛いです!」
国光は、里穂にシャワーブースの壁に手を突かせ、背後から立ちバックの姿勢で貫いた。
里穂から、苦痛の悲鳴をあげさせる目的で、敢えて前戯もこなさず、いきなり挿入する。リアルな処女喪失をできるだけ忠実に再現しようというのだ。
「くくく、これでお前も女になったなぁ」
苦痛に歪む里穂の表情を鏡越しに鑑賞しながら、国光は歪んだサディズムを思う存分堪能する。経血にまみれた肉棒を破瓜の証に見立てて、上機嫌で腰を振り立てるのだった…。
土曜日は自宅で過ごすことが許されたが、それすら里穂にとって安息の時間ではなかった。無数のカメラが、家庭の様子を会員達に配信しつづけているのだ。セクハラ目的の電話が、頻繁に里穂のスマホを鳴らした。
(応対しないという選択肢はなかった。なにせ、五コール以内に応答がない場合は、会員は自宅に踏み込んでよい、というルールになっているのだ)
この日は、里穂がトイレに入るなり、日置からの着信があった。
「おう、里穂先生、トイレかい?」
「…は、はい、そうですが…あの、何の御用でしょう?」
「ん、別に用って用はないんだけどねぇ。ねぇ、今から大きいほうかい?」
「ち、違いますっ」
「いいんだよ、このままウンチしても。もう僕はこの前全部見ちゃったんだからね。遠慮なく、ひり出しなよ」
「ほんとに違いますから、もう、用がないなら切ります!」
「ダメだよ、勝手に切っちゃ。僕は里穂先生がひり出すところは全部立ち合いたいと思っているくらいなんだから、ひひひひ」
「…く、狂ってます、もう、許して…」
強烈すぎる浣腸ショーの光景が、理性のタガを吹き飛ばしてしまったのだろう。日置の排泄に関するフェチズムは、里穂を震撼させた。
純平と里穂は、慰安旅行以来、めっきりコミュニケーションが減った。浣腸責めのステージとなった食卓を使用することは憚られ、食事はそれぞれの部屋で個別に摂るようになっていた。
里穂が用意した昼食を純平の部屋へ運ぶ。何か一言、二言でも会話をしなければと、口を開こうとするが、そんな時は決まって会員からの着信がある。監視カメラ越しにタイミングを見計らって発信されているのは、明らかだった。
「おい、里穂先生、弟の部屋に忍び込んで、これから夜這いでもしかけようっていうのか?」
「夜這いってまだ昼だぞ、ははは!」
どうやらグループ通話になっているようだ。電話越しの会員は複数いるようだ。不明瞭な音声からは、誰の発言なのかは判然としないが、どの会員も負けず劣らず残酷なサディストの本性を剥き出しにしている。
淫鬼たちとの間の会話を弟に聞かせたくはない。すぐさま里穂は純平の部屋を立ち去ろうとするが、あえなく制止される。弟の前で、なにやらいやらしいことをさせられる予感に、目の前が暗くなる。
「我々がプレゼントした下着、今日は身に着けているんだろうな?」
「…はい。言われたとおり、着用しています」
「どうだ、感想は?気に入ったか?」
「と、とても、素敵ですわ」
「そうか、じゃあ、弟君にも感想を聞くとしようか?」
今朝、差出人不明の郵便で下着を受け取っていた。受け取ったらすぐに着用すること、というメモが添えられており、里穂はその指示に従った。
顔の見えない会員達は、純平の前で衣服を脱いで、その下着姿を晒せ、と里穂に迫っている。近親相姦に走ることがないように監視するなどという口実を掲げておきながら、一方で弟を誘惑せよというのだ。理不尽な要求に、里穂の顔は怒りのあまり真っ赤になった。彼らは、あわよくば純平に里穂を襲わせ、それを口実にまた自宅に踏み込んでくる狙いなのだろう。里穂は、憤りで奥歯を噛みしめるばかりで、何も答えようとしない。
「おい、シカトか?今から様子を見にいくぞ、いいのか?」
「私も駆け付けますよ、車を飛ばせば、十五分後には到着する」
唯一与えられた休日に凌辱鬼が自宅に踏み込んでくるなど、耐えられなかった。里穂は、気持ちを押し殺して、ようやく口を開いた。
「す、すみませんでした。ぬ、脱ぎますから、少し待ってください」
里穂は、通話状態のまま、スピーカーモードに切り替え、スマホを脇に置いた。ついで、薄手のサマーニットと、細身のスキニージーンズを震える手つきで脱ぎ捨てていった。
下着は、黒のボディフィットテディだった。黒い総レースの生地にはうっすらと乳首がすけている。ハイレグの切込みは鋭角で、何とか割れ目を隠すのが精いっぱいというほど生地が絞られている。里穂は、弟と、カメラ越しの原口らの視線を肌の上に感じ、思わず両手で乳首と股間を覆い隠してしまう。
「けけけっ、クソをひり出すところまで見せといて、今更気取るなよ」
「もう、それはおっしゃらないで!」
心無い言葉に、里穂の胸は抉られる。排泄シーンを複数の男の目に晒したことは、里穂にとってトラウマそのものだった。切迫した便意の苦しみや、卒倒しそうなほどの恥ずかしさを思い出すだけで、心拍数が高まり、額に脂汗が浮かんでくる。
「すまん、すまん。じゃ、弟君に感想を聞いてみろよ。そうだ、両手を頭の後ろに組んで、腰をクネクネしながらだぞ、ほら、やれ!」
「じゅ、純平…この下着、ど、どうかしら…」
言われるがまま、いやらしい腰振りを演じながら、弟に語り掛ける。口には出せないが、心の中では、弟に対する申し訳ない気持ちで、いっぱいだった。
姉の痴態の前に、案の定純平は発情してしまった。股間が、ゴワゴワしたジーンズの生地を窮屈そうに押し上げているのを、会員達は見逃さなかった。
「おい、純平君。また変な気を起こしたんじゃあないか?」
「お姉ちゃんに乱暴したら、おじさんたちが許さないからな」
会員達は、純平を牽制しつつ、やがてさらに陰湿な要求を突き付けてきた。
「純平君、少しスッキリしておいた方がいいんじゃないか?ほれ、シコシコして、冷静になれば、心も落ち着くだろう」
「弟に、変なことさせないでください…」
「ん?文句あるのか?そうだ、弟君が恥ずかしがってるみたいだぞ。ほら、君がちょっとオマンコほじほじして見せたら、純平君もリラックスできるんじゃないか?」
「くくく、そりゃあいいアイデアだ。見せっこオナニーでお互いの欲求不満をも解消、というわけですな」
「どうして、そんなことまで…」
姉弟は、シングルベッドを挟んで自慰行為の見せつけあいを演じさせられた。
(純平、ごめんなさい…言うとおりにするしかないの)
里穂の無念そうな表情を読み取った純平は、ジーンズのジッパーを下げ、ペニスを固く握りしめた。里穂はというと、ぎこちない手つきで、パンティのクロッチ部分をそっと撫で始めた。指が花芯にそっと触れただけで、予想以上の強烈な電流が背筋を走る。身体をブルっと震わせてしまう様子は、男達に思いきり囃したてられた。
「分かってると思うが、お互い昇天するまで、終わらなせないぞ。里穂先生は、イったふりなんかしたら、すぐ分かるからな。本意気でマンズリかくんだぞ、ひひひひ」
里穂の身体の熱は高ぶる一方だが、血走った眼付の純平や、カメラ越しのギャラリーの視線が気になってどうしてもペースをセーブしてしまうからだろうか、どうしても絶頂まで至らない。
「里穂先生、ヤル気あるのかい?私らも忙しいんだからな。いつまでも君らの変態プレイに付き合ってられないんだ」
「ぅぅ、そんな言い方は…そもそもこれはあなたたちが…」
「そうだ、先生、イマイチ盛り上がらないなら、玩具を使ったらいいじゃないか。ほら、この間の『家庭訪問』のときに、色々置いていっただろ?あれ、持って来いよ」
慰安旅行の帰りに自宅を荒らされた後、会員達は用意した大人の玩具類、および浣腸道具の類を放置していった。
「急に邪魔することもあるかもしれないから、これらはしっかり管理するんだぞ」
不吉な予告とともに、権田に言い含められていた。忌まわしい記憶を喚起するそれら性具は、視界に入れたくなかったので、押し入れの奥底にしまっていたのだが、それを引っ張りだす羽目になった。
「手っ取り早くイケそうなのは、やっぱり電マかな。ほら、強度はマックスにしてオマンコにスリスリしろや」
震える手で股間に添えた器具のスイッチをオンにする。機械的な振動が、敏感なクリトリスを強かに揺さぶる。恐ろしさから、反射的に電源を切ってしまうが、スマホからは嵐のような叱責が鳴り響く。里穂は、観念したように再度凶器を作動させる。
「ああ、とても、耐えられません…」
『樫の間』でも、電マで散々泣かされたが、あの時は男たちに強引に押し付けられていたのだ。今は、自分の手で快感を手繰り寄せる形で、感じ方が全く異なっている。自慰行為の背徳感からか、振動はより鋭く里穂の官能を掘り返した。もはや、直立していることもままならない。膝立ちに崩れおち、次いで、上体も床に突っ伏してしまう。高く持ち上がった尻をクネクネと捩り、肉の悦びを存分に表現してしまう。
「くくく、ずいぶんと気合の入った尻振りダンスだな」
「欲求不満そのものじゃないか」
「一日でも俺たちとハメハメしないと、おかしくなっちまうんだろ?」
「そ、そんなこ、くっ、くぅぅ…」
「ははは、邪魔するなってか。一人で楽しんでないで、ちょっとは弟君の様子も気にしたらどうだ?ゴール間際だぞ」
命じられて、里穂は顔をあげた。紅潮し、口をだらしなく半開きにした純平と視線があってしまった。
(ああ、私も純平と同じなんだわ。いやらしくて、情けない表情してるんだわ、きっと…)
姉弟揃って淫獄に落ちていく。踏みとどまる自制心が、純平のふやけ切った表情を見ると、虚しく霧散してしまう。
「純平、私、もう限界だわ。いっちゃうの、ごめん、ごめんね、こんな女で、許してっああ!」