私は、しばらく呆然と画面を眺めていた。結局、添田さんは私を裏切らなかった。密室の中で、若い優奈ちゃんに、それもあんなに官能的な姿で迫られたのというのに。嬉しい、という気持ちよりも先に、自己嫌悪が湧き上がってきた。彼のことを、信じ切れなかった自分。背後から身体を愛撫してくる染谷の偽りの優しさに、魂を売り渡しつつあった、この私…
これ以上、心も、身体も汚されたくない。そういう強い気持ちがふつふつと湧いてきた。私は、添田さんに相応しい女性に、なりたい。心も、身体も、求めているのは、彼のことだけ。そうでないと、いけないんだ。
私は、後ろからまとわりついてくる染谷の二本の腕を振り払い、ソファから立ち上がり、床に落ちていた大きなバスタオルで身体を覆った。
「…もう、これ以上、好きには、させませんから」
「ちっ、人がせっかく優しくしてやろうってのに。まったく、どうしても乱暴にされたいみたいだな。いいぜ、やってやるよ」
染谷は、優男の仮面を、いとも簡単に脱ぎ捨てて、私に襲い掛かってきた。手足をバタつかせたり、クッションや、置時計、ティッシュ箱まで、手あたり次第に投げつけたりして抵抗したけれど、やがて男の太い腕で抱きかかえられ、最後にはキングサイズのベッドの上に、放り投げられた。
「大勢にはめられた後だ。ちょっと緩くなってるかもしれないけど、我慢してやるよ」
「こないで、もう、イヤなんです!近寄らないで!」
上から覆いかぶさってきた男の胸板を両手で押し返そうとするけど、とても無理だった。大学の体育会で鍛えたというその分厚い筋肉は私の抵抗などものともしない。グイ、グイと男の体躯が私に迫ってくる。腿を抱きかかえられ、割開かれる。飛行機の中の、あのブランケットの中の交合が、脳裏に蘇ってくる。また、あの信じられない大きさのそれが、私の、中に…もう、快感に我を忘れることは、許されない。これ以上、自分を嫌いになりたくない。
「ふふふ、添田君は浮気しなかったんだから、あなただけお楽しみ、ってわけにはいかないわよねぇ」
鈴原に揶揄されて、焦りが募る。一日中、性的な刺激に晒された後で、あの衝撃に、耐えれるんだろうか。機内で、好き放題に喘ぎ声を絞られた記憶が、まざまざと蘇る。しかも…
今の私はきっと、いつも以上に敏感になってしまっている。立ち上ってくる妖しい感情を、意志の力で押さえつけることできるのか。いや、それをしないといけない。なんとしても。
ミシミシ、ミシミシっ。あの大きな尖端が、私を苛んだ。ほとんど濡れてなかったのと、十人の男達に休みなく荒らされたせいで、膣に痛みを感じる。だけど、その痛みが私を性的な興奮から遠ざけてくれる。
私は、罰を受けている。痛みに耐えて、罪を償う。もう一度添田さんに会うためには、この苦行で、自分を洗い清める必要があるんだ。そんな風に強く念じながら、私はただ時間が過ぎるのを待った。
「ちっ、やせ我慢するなよ。なぁ、今朝はあんなに腰振って、ヨガってただろ?おい!」
染谷の調子はどこか動揺しているように聞こえる。この男が、滑稽に見えてくる。そうだ。いつもセックスでは女を狂わせるのに慣れているせいで、濡れない女が怖いんだ。今の私は、快感に呑まれてなんかいない。弱くない。私は、痛みを積極的に呼び込むように、腰を突き出して染谷を取り込んだ。
そうだ、この乾いた膣の中で、射精させてあげる。とっても惨めな気分に、させてあげるから。私は、添田さんと離れ離れになって以来初めて、自分に自信を取り戻し始めていた。
その時だった。
「おい、摩耶、どこにいる!」
怒声とともに、橘社長がこの部屋に戻ってきた。ひどく苛立っているように聞こえる。優奈ちゃんを、投資家たちに強奪されて、怒り狂っているのだろう。哀れな男達。私は、もはや彼らを恐れていなかった。
「ちっ、染谷か。代われや、早く」
ネクタイをほどきながら、語気強く言い放つ。
「社長、そんなにカッカしないでくださいな。摩耶は今日現地人十人にやられたばかりで、おまけに今はこうして染谷君と繋がってるんですから、もうガバガバですよ、きっと。それより、ふふふふ」
鈴原が、橘社長に何かを耳打ちした。社長の口角が、いやらしくつり上がるのが、視界の端に見えた。何か、イヤな予感がする。とっても、不気味な…
次の瞬間、視界が反転した。染谷の腕が私の背中に廻り、繋がったままの身体が、抱きかかえられてぐるっと回転させられ、正常位から騎乗位の姿勢に、あっという間に組み替えられた。いったい、何をするつもりなのか。
疑問が脳裏をよぎると同時に、お尻の割れ目の方に、気色の悪い感触がした。お尻の穴を、外気がスーッと、撫でる、あの感触。染谷の大きな両手が、私の左右のお尻のお肉を、鷲掴みにして、左右に向けて思いきり引っ張っているのだ。
「や、止めて、放して、ひ、ひぃぃ、な、なんなんですか、これは!」
思わず、叫んだ。ジェル状の何か?が、私の後ろの穴の入り口に注がれた。ひんやりしたその感触に、身がすくむ。さっき散々悪戯されたせいかだろうか、お尻は刺激に対して、過敏になっている。
「ふふふ、潤滑油よ。準備体操は、野菜スティックだけだったからね。いきなりおチンチン入れられたら、避けちゃうでしょうから。感謝なさい」
耳に飛び込んできたこの女の言葉を、私の脳は理解することを拒んだ。意味が分からない。分かるわけがない。そう言い聞かしている自分がいる。だけど…
お尻をこうして割開かれて、そこに「潤滑油」を流し込まれて。おまけに、背後で衣擦れの音、そして社長の脱ぎ捨てたベルトのバックルが床を叩く音が聞こえる。
これら全てが示唆しているもの。それは…これから、私はお尻を犯される、ということ以外にはありえなかった。
「いっ、いやっ、いやぁぁぁぁ!!!」
お尻の穴でするセックスというものの存在は、優奈ちゃんから、それとなく聞かされていた。優奈ちゃんは、橘社長と、どこかの銀行の支店長の二人がかりで、前と後ろの両方から挿入れたことが、何度もある、と言っていた。どうして、それが私の身にも降りかかる、と想像しなかったのだろう。目の前の災難は、あまりにも唐突に飛び出してきたように思える。私は、さっきまでの気丈さを完全に失って、パニック状態に陥っていた。
「そんなこと、したくないんです!お願いですから、入れるのは、お尻に入れるのは許して!」
「ふふ、食わず嫌いは良くないよ、摩耶。さっき野菜で悪戯されてるとき、マン汁ぐっしょり垂らしてたじゃないか。きっと好きなんだよ、摩耶は。ケツを苛められるのが」
「ほう、そうなのか。それは関心だな。前と後ろ、サンドウィッチにされてようやく奴隷としては一人前だからな」
「く、狂ってます、あなたたちは…」
「ふふ、狂わされるんでしょ、あなたもどうせ」
橘社長のそれは、たっぷりと潤滑油を纏って、私のアナルを訪れた。ヌルヌルの粘液に助けられながら、お尻の穴の回りの皮膚が思いきり拡張される。裂けるような、という表現が月並みに思えるほどの痛みが、私を襲った。
「い、挿入れないで、これ以上は、無理ですっ!」
「ははははっ、これ以上って、まだ亀頭の半分も入ってないぞ」
「う、ウソ、そんな…」
永遠のような時間をかけて、この苦痛に耐えているというのに、また、ほんの先端しか通過していない。私は涙声で許しを乞う。
「かわいそうに、摩耶。キスしてあげよう。少し気がまぎれるだろう」
私の取り乱す様を見てか、染谷が調子を取り戻して、またプレイボーイの役割を演じ始めた。あんまりにも軽薄だけど、寄せられる唇と舌をかわす余裕が、今の私にはない。されるがまま、口の中を改めて犯された。舌を吸い上げられる。二人の男の体躯に押しつぶされながら、左右の外側に窮屈そうに飛び出た乳房の尖端を、染谷の中指と親指でコリコリと摘ままれる。
全身の血流に妖気が充満してきた。まただ。また、私の身体は、火をつけられる…
「ほら、ちゃっかり濡れてきたじゃないか。聞こえるだろ。この音」
三層の一番下に敷かれた染谷が、窮屈そうに腰をくねらせると、結合部分から湿った、いやらしい音が零れはじめた。ヌチャ、ヌチャ、クチュクチュ。敗北の予感で、頭が真っ暗になる。
そうしている間にも、橘社長の性器は、ミリ単位の前進を続けている。総身を真っ二つに割られるような、激しい衝撃で息が詰まりそうになる。だけど、段々と、痛みは遠ざかっていく。まるで、たっぷりと分泌された愛液が、裏側のお尻の穴に通じて、痛みの電気信号を遮っている、そんな錯覚に襲われる。
気づけば、私のアナルは社長の亀頭を全て呑みこんでいた。張り出した部分が通過すると、後は早かった。瞬く間に、ペニスは根元まで差し込まれた。私は、もう声を我慢することが、できなくなっていた。
「くくくくくっ、すっかりサンドイッチにされるのが気に入ったみたいだな。甘ったるく泣きやがって」
帰ってきたときはあんなにも苛立っていた社長が、いまや上機嫌だ。私が、お尻の穴のセックスで、感じ始めているのが、そんなに嬉しいのか。こんな、変態的な行為で欲情するなんて、絶対にイヤだ。だけど…
お尻を貫いたペニスに体重かかる。そのせいで、反対側の染谷の性器がゴリゴリと膣の天井部分に食い込む。ちょっと身じろぎするだけで、頭の先からつま先まで快感の電流が駆け巡る。
「それにしても、ついこの前で処女だった癖に、やけに物覚えが早いじゃないか」
「ふふ、ご存じないのね。処女をこじらすと、色々妄想ばかり膨らますものなんですよ、女っていうのは。これだけアナルのセンスがいいところ見ると、ふふ、お尻でオナニーでもしてたんじゃないかしら」
「…そ、そんなわけ、くっ、あ、あり、まっ、あああああん」
言葉を発することも、難しい。口を開くと、嬌声を発してしまう。認めたくなかったけど、私は二人の男に挟み撃ちにされて、我を忘れていた。
そうして、男達は私を、快楽の谷に突き落とした。三体が私の前後の穴で繋がったまま、身体をグル!と回転させた。私は仰向けになり、橘社長が下に、染谷が上になった。下になった社長のペニスが、お腹の中の一層深い部分にめり込む。さらに、二人の人間の体重から自由になった染谷が、上から激しいピストン運動を始めた。もう、マシンガンで何発もの銃弾を浴びせられたように、私は身体を震わせた。境目の定かではない、連続したエクスタシーに舞い上がり、踊らされ、狂わされた。
「あーあ、添田君がこの姿見たらどう思うんだろうなぁ。あなたがアナルセックス愛好家だって知ったら。彼のビックリする顔、見たいなぁ。ねぇ、彼起こして、ここに呼んじゃいませんか?」
「う、うぅぅぅぅ、ダメ、それだけは絶対にダメ!」
「おぉ、鈴原先輩、すごいですよ。添田さんって名前聞いた瞬間、中がキュウってすごい勢いで締め付けるんですよ」
「ああ、尻の方もな。やたらとウネウネ動きやがる。添田の前でハメたら、すごいことになりそうだなぁ。おい、鈴原、呼んで来い」
「ダメです、ダメです、絶対にダメェ!お願いです、お願いしますから、何でもしますから、それだけはどうか…」
理性もプライドも、今はもう瓦礫の下敷き。私は、許してほしければ、と強いられたセリフを、うわ言のように口にしていた。
「私、笠谷摩耶は、マゾ体質です、だから…乱暴にされて、雑に扱われると、とっても興奮しますっ、ううぅぅ」
「しょ、処女歴が長すぎて、お、オナニーばかり、していたので、経験の割に、とっても、敏感で、濡れやすいんです」
「大勢の人に、見られながら、セ、セックスするのが、私の、い、一番の幸せです」
「お、お尻とオマンコ、両方、一緒に犯されるの、だっ、大好き…」
強いられるまま、屈辱的な言葉を吐きだす。一語、一語が、心を抉る。
一つ吐き出し終えると、すかさず、ご褒美とばかりに男達が一斉に腰を振り立てるので、私は簡単にイカされる。痙攣が止むと、また恥ずかしいセリフを言わされる。その繰り返し。もう、文字通りの玩具に成り下がってしまった。
でも、鈴原から添田さんのことを侮辱するようなセリフ与えられた時、私はそれを拒んだ。今度は、お仕置きだ、というように、やはり男達は激しいピストン運動で報復してくる。そうして絶頂に導かれることは、もはや避けられなかった。けれども、私は最後まで、添田さんを貶めるようなことを、口にすることはなかった。それだけが、私にできる、精一杯の抵抗だった。