笹山課長は、私を悠然と見下ろしながら、衣服を脱ぎ捨てていった。ベッドの上に仁王立ちになりながら、赤っぽい照明を背中にして、逆光気味に、中年男性のシルエットを浮かび上がっている。歳は四十代の後半。年相応に流石に贅肉が着いているが、大学時代にはラグビー部で全国大会に出場したというだけはあって、脂肪の下に分厚い筋肉の層を隠している、そんな体型だ。
ボクサーブリーフをずり下げると、中から太く突き出した男性器が、ブルんと音を立てるように弓なりに跳ねた。黒ずんで、血管がグロテスクに浮き出したそれが視界に入ってくると、ぎょっとして顔を背けた。
「どうだ、添田のと比べて。一回り以上大きいんじゃないのか」
「くっ…知りません」
「ふん、まあいい。感想はじっくり中で味わってもらってから聞こうじゃないか」
節くれだった手が、私のパンティを掴んだ。一気に剥ぎ取られるのかと、私は身を固くした。そんな私を揶揄うように、課長の左右の手はパンティをほんの数センチ、いや、数ミリ程度ほど微かにずり下していった。
「おおっと、毛が出てきたぞ。くく、薄めの生え具合だな。いいぞ、俺好みだ。手入れでもしてるのか?」
この男は、なにもかもが添田さんとは正反対だ。女に対する労わりなど、一切持ち合わせていない。むしろ、苦痛や恥を与えることを楽しんでいる。私が恥じらえば恥じらうほど、怯えれば怯えるほど、そして許しを乞えば乞うほど、この男を喜ばせるだけだ。今、私にできる最大の抵抗は、反応しないこと。耐えるしかないの。じっと身体を石にして、終わるのを待つしかないの…。だが、そんな決心は、簡単に突き崩されてしまった。
「さて、じゃ、入れさせてもらうかな」
「えっ!もう、そんな急に…」
「ん?…ははは、なんだ、前戯のおねだりかい?」
「ち、ちが…そんなんじゃ…」
添田さんは、セックスの前にはいつも、丹念に、丁寧に私を労わってくれた。指や、舌で。あまりにそれが長く続くから、快感が高まりすぎて、彼の男性器を迎えいれるの頃には自分のピークが過ぎてしまうような、そんな気がして、いつも私から挿入を促していた。それが当たり前だと思っていた。課長に、そんな私と添田さんとの営みを見透かされたような気がして、狼狽えてしまった。
「悪いが、お断りだ。添田がどうだったのかは知らないが、俺はまだ開ききってないオマンコを切り拓くのが好みでね。ジュクジュクにしてから突っ込んだんじゃあ、新鮮なオマンコが味わえないだろ」
切り拓く、という言葉が、やけに生々しく、私の恐怖心を煽った。それでも私は勇気を振り絞って言った。
「…さ、最低ですね、あなたという人は…」
「ははは、何とでもいうがいい。だが安心したまえ、もうこんなにパンティに染みまで出来てる。前戯も何もあったもんじゃないさ」
「…す、好きになさってください」
「ああ、そうさせてもらうぜ。じゃあ、遠慮なく生のオマンコ、いただくぜ」
生、という言葉が脳内に木霊した。ダメだ、それだけは許してはダメ。それは、添田さんにだけ捧げたものだ。
「う、ウソ…つ、着けないつもりなんですか⁉」
「はぁ?往生際が悪いぞ。好きにしろと言ったじゃないか」
「ダメです!生は、生ではいや、絶対にイヤよ、放して!」
私は力を振り絞って、両脚をめちゃくちゃにバタつかせ、膝裏にかかった課長の手を振り払った。
「ちっ、面倒くさい奴だぜ。分かったよ。着けてやる。なに、今にお前の方から生でしたいと言わせてやるさ」
サイドテーブルに備えられたコンドームを乱暴にパッケージから取り出すと、課長は素早くそれを装着した。改めて私の股の間に腰を埋めると、ペニスの尖端を押し付けてきた。
課長のそれは、私の女の入り口を挑発するように、助走をするように、ツンツンと突いてまわった。先の方の、ほんの二、三センチが中に侵入したかと思うと、後退していく。次の一突きで串刺しにされる、その恐怖で身体がカチカチに緊張する。両眼を固く閉じ合わせているから、男の表情は分からないけど、そんな怯えた私の様子を楽しんでいるのは、間違いない。焦らしに耐えかねて、眼を開き、抗議しようとした口を開いた次の瞬間。
「ひっ、ぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!」
思いきり覆いかぶさるように、課長が身体をぶつけてきた。衝撃が、腰の方から頭の先、爪先まで波打った。痛みというよりも、電気が流れるような痺れが全身を襲った。
「ふふ、気に入ってくれたかな。腹ペコでいきなり突き刺すのも、いいもんだろ、なぁ?」
「はぁ、はぁ、はぁ、ら、乱暴に、しない、で、あぁ、ま、また!」
私の身体を一瞬で貫いたペニスは、引き抜かれる時も容赦がない。一気に私の身体から飛び出た男性器が頭上にかざされた。私の体液が、隈なく付着していて、眼を覆いたくなる。
「もう、そんな風にしないで…。するなら、優しくしてください…」
「嫌だね。オマンコは蕾のまま愉しみたいのでね。ダラダラ抜き差ししていると緩くなっちまう。だからこうして、鮮度を保っているのさ、ほら、もう一発だ!」
「はぁうぅぅぅぅん!」
二度目が私を襲った。喉を突きだして、悲鳴ともヨガリ声ともつかない叫びをあげてしまう。これ以上耐えられない、激しすぎる。もう一度ペニスを引き抜こうと課長が腰を後退させる気配を感じる。私は両脚を課長の背中に絡めて、すがってしまった。
「ん?なんだ、行かないで、ってか?くくくっ、浮気するのが早すぎじゃないか。これじゃぁ添田に申し訳なくって萎えちまうぜ」
言葉とは裏腹に、課長は私の中で一層膨れ上がっていた。女の弱みを隠しきれない私に欲情している。
「くっ…そんなこと…。私は、ただ、乱暴にするのを、やめてほしいだっ、け、む、むぅぅぅぅん」
「ほら、サービスだ。こうして欲しいんだろ、違うか?」
ペニスは、私の中にとどまり、膣の天井部分に狙いを定めて、先端をグリグリと圧迫してきた。添田さんが育ててくれた私の秘密の部分が、いとも簡単に探し当てられ、踏み荒らされてしまった…。
添田さんが、「Gスポット」って呼んでいたその部分が、笹山課長のペニスでしつこく捏ね上げられているうち、全身が熱を帯びてぼーっとしてきた。気づけばいつの間にか、上半身も裸にされて両手で乳首を悪戯されている。
「気分が出てきたなぁ、エロい声出しやがって。中もトロトロになってよぉ」
身体を石にしようなんて誓いは虚しく放棄されて、甘ったれた声が零れてしまう。アソコの方は…。課長に妖しい動きで攪拌される度に、クチュ、ネチュっという淫らな音を立ててしまっている。
「お前、いいもの持ってるぜ。ここまでヌラヌラに濡らしても、締まりが全然悪くならないじゃないか。むしろキュウキュウ締め付けてきやがる。添田がハマるのも無理ないな」
こんな男に、こんな風に言われても嬉しいはずがない。なのに、手の平で私の頭頂部を撫で撫でされると、何故だろう、中がジーンと痺れたような感覚がする。膣の襞が切なく収縮してしまう。こんなの、あんまりに惨めじゃないか…。
「お前、セックスでイったことは、あるのか?」
少し思案してから、私は答えた。
「…はい」
私は、添田さんの女。今はこうしてあなたに組み敷かれているけれど、私の初めては全部添田さんに捧げた。心の中で、そんな風に念じていた。
課長は、少し残念そうな表情を浮かべていた。
「そうかい、そりゃ結構。だが、まだ奥の奥でイったことはないんじゃないか」
「…な、なんのことですか?」
「ほら、ここだよ、ここ。添田のチンポは、ここまで届いたのか?」
「え、えっ、うっ…これは…」
私の両脚は、課長の両肩の上に乗せられた。そうして私の下半身を折り重ねたまま、全体重を乗せてストロークが放たれた。上から、ドシン、ドシンと、まるで杭を打つように、凶器が私を深堀していった。
「ダメ、やめて、お、奥は、つ、辛いんです!」
「へへ、辛いなんて、白々しいぜ。気持ちよすぎてぶっ飛びそうなんだろ。顔にそう書いてるぞ」
図星だった。人生で一度も、触れられたことすらないゾーンに侵入されて、私はパニック状態になっていた。身体の奥底の敏感なその核心を、まるで銅鑼でも叩くように鈍器で強打され、振動が全身を走りぬけた。
「お願いです、もう、もうしないで、奥は、ダメです、ダメに、むぅぅ……なってしまいますっっっ…」
「はは、もうお前は十分ダメな女だよ。ちょっと離れている間にすぐ浮気しちまうチンポ狂いだよ」
「あぁぁん、そんな、言い方は、や、めて…くっ、くぅぅぅぅぅぅ」
惨めで、涙が溢れてきた。そんな気持ちとは無関係に、身体は、奥から湧き上がる快感の波の中で踊っていた。添田さんを裏切りたくない、その気持ちはたしかに存在しているけど、身体と切り離されてしまっていた。私の身体は、この男のペニスに舵を譲り渡してしまっていた。
「一度気をやって、楽になれよ。ほら、我慢するな」
「うぅぅ、悔しい、私、こんなのイヤです」
「いいんだって。受け入れろよ、ドスケベでどうしようもない自分を。ほら、ラストスパートだ!」
短く、早いストロークが奥を襲った。それは私の理性を絶命させた。
「あああああああ、ダメです、止めて、止めてぇぇっ…いっ、ぃぃぃっ、く…」