彼のマンションを出ると、道路を挟んで向こう側に、七人乗りで大型のSUVが停車していた。私が出てくると、合図のように短いクラクションが鳴らされる。心臓が止まりそうになる。
こちら側の窓ガラスが開いた。中から見知った顔が覗く。運転席には、ITの大隈。後部座席には人事部長の小平と笹山課長が。さらに、助手席には、情シス部長の堂島さんの姿まで見えた。全員、あの日、役員会議室で私を裁いた男達だ。バックのストラップを握り締める手に思わず力が入った。
私が立ちすくんでいると、今度は思いきり大音量で長いクラクションが鳴らされた。早くこっちへこい、そういって圧力をかけられている。
もし、彼がマンションの廊下に出て私を見送っていたら…?私は、勇気を振り絞って、添田さんの部屋の方を振り返った。幸い、彼の姿はそこにはなかった。私は、車の方へと駆け寄った。
「おい、摩耶、十五分も遅刻だ。たっぷりお仕置きだぞ」
「ご、ごめんなさい…」
笹山課長がねちっこい手つきでスカート越しに腿を撫でてくる。ぞっと寒気がしてくる。
「昨日は久しぶりに添田とやったのかい、笠谷君?」
人事部長の小平も、嬲りに加わってくる。その場に社長がいない今、好色な表情を隠しもしない。私が質問を無視していると、思いきり胸を鷲掴みにしてきた。
「い、痛い!やめてくださいっ!」
「イヤだね。まったく誰のおかげで派遣社員から正社員してやったと思っているんだ。恩知らずの問題社員には折檻が必要だ、それ!」
小平は、私のロングスカートをたくし上げ、すかさずパンティをズリ降ろす。中から飛び出した私のお尻を、思いきり平手で叩いた。
「おい、堂島、どうだ?いいケツしてるだろ、この女」
「は、はい。そうですね、たまりませんね…」
堂島課長が助手席から身を乗り出して、食い入るようにこちらの方を見ている。初めは味方だと思っていたこの人も、結局は他の男達と同類だった。
「ああっ、い、痛いです。ごめんなさい、いいます、言いますから。その、一度だけです。いぃぃ!ほ、ほんとに、ほんとに一度だけですからっ!」
何度も打たれて、ようやくスパンキングは鳴りやんだ。
…添田さんが帰国したあとも私は、性奴隷のままだった。誰にも見せられないような恥ずかしい姿をたくさん記録されて、もう抵抗しようもなかった。社内では、普通に仕事をさせてもらえたし、添田さんとの交際も認められた。だけど…、彼とセックスするには、社長の許可が必要だった。
金曜日に、添田さんのお家に宿泊したい。そう申し出ると、橘社長から交換条件が提示された。それは、土日の一泊二日で、箱根の温泉宿(会社の保養所としても利用している施設だ)に同行すること。功績の大きい社員を集めた慰安旅行だ、と説明されていたけど、要するにこの男達に、私を嬲らせるつもりなんだ。
「朝八時に、迎えの車を添田の家の前に寄こす。遅刻するんじゃないぞ」
自分で、電車で行きます、と言ったけれど、聞き入れられることはなかった…
車は、箱根の方へ向かって、高速道路を疾走している。
笹山と小平の手で、あっというまに衣服を剥ぎ取られて、私はもう既に全裸に剥かれていた。
「ほら、両手を頭の後ろで組んで、脚はM字型に開け!」
彼らは、私の弱々しい抵抗すら許さなかった。早く言うとおりにしないと、着ていた服を全部外に放り投げるぞ、いや、全裸のままお前を路肩に放置してやろうか、などとすごまれたら、従わないわけにはいかない。どうしようもなかった。
「ちっ、これ以上手間取らせるなよ、摩耶。お前はただ男に発情されられるのが仕事なんだからよ」
「…は、はい、わかり、ました。」
「橘社長からは、宿に着いたらすぐに君を嵌めるから、チューニングをしておくようにと言われているんでね。しっかり練り上げていくからな、楽しんでくれたまえ、くくくくっ」
小平が気色の悪い笑い声を浮かべながら、フェザータッチで私の腿の付け根から脇腹をくすぐってきた。両手を頭の後ろで組んでいるから、無防備に開いた腋の下にも、舌が這ってくる。身体に力が入って、イヤな汗が吹きこぼれてくる。胸がキュウって苦しく感じる。視線を乳房に落とすと、絶望的なくらい、固く、鋭く乳首が飛び出していた。
そんな女の弱みを、左右の男二人が見落とすはずがない。ねちっこく摘まれ、弾かれ、舐められて、最後には甘噛みされる。私はもうしっかり濡らしてしまっていた。
「まだ到着まで二時間はかかるよな?じゃ、俺はそろそろハメさせてもらうぜ」
笹山が、ベルトを緩めている。小平は、若干慌てた様子で言う。
「お、おい、笹山、いいのかよ、そんなことをして?社長からは、この子を興奮させておけ、としか言われていないんだぞ」
「けっ、つまらんチキン野郎だなお前ってやつは相変わらず。社長はなぁ、宿の女将も手籠めにしてるんだ。今頃先にチェックインしてその女将と風呂でやりまくってるところさ。
それにこの摩耶はな、もとはと言えば俺が仕入れた女なんだ。誰にも文句は言わせねえよ」
言い終わると、笹山はもう下半身を剥き出しにしていた。反り返ったペニスが視界に入って、急激に嫌悪感が高まる。思わず、口走ってしまった。
「い、イヤです、したく、ありません…」
「そうかい、なら仕方ない。このままここで置いていくぞ。おい、大隈、車止めて端へ寄せろ!ハザードランプをつけてな。よしよし、そうだ。ほら、出ろ」
私は、強引に手を引っ張られ、お尻を思いきりキックされて車の外に放り出された。私は、五月半ばの、快晴の空の下、丸裸で外に放りだされた。無情にも、車のドアが閉ざされた。私は、半狂乱で窓ガラスをノックした。
「開けて、開けてください!私が、悪かったんです、お願いですから、中に入れて!」
中の男達は、私の慌てぶりを見て、大盛り上がりだ。私だけが、悲壮な顔をして、許しを乞うている。
「わ、私、セックスがしたい、今すぐ、笹山課長と。すごく、したいんです」
開けてほしければ、腰をくねらせながら、おねだりしろと言われて、私は震える声で懇願させられた。それでも、意地悪な男は扉を開けようとしない。そうこうしている間にも、何台かの車が私の脇を通りぬけていく。もちろん、多分私の裸に気づいているだろう。一刻も早く、身体を隠さないと、大変な事になる。警察でも呼ばれたら…恐ろしい考えで、頭が真っ白になる。
「なあ、もし社長に問い詰められたら、自分から誘いました、オマンコが疼いてしかたなかったんです、って自白する。それでいいんだよな?」
「う、うぅぅ、はい、それで構いませんから、早く、開けて」
「当然、生で、中出しだよなぁ?」
「はい…それで、生で、中で、お、お願いしますからっ、ああっ」
そこまで言わされて、ようやく私は車の中に戻された。
「全く、とんでもない悪党だぜ、お前は」
小平が呆れたように、だけど目はギラギラしながら言った。
「さて、女が恥も服も放り投げて求愛してくれてるんだ、据え膳食わぬは男の恥、だよな。遠慮なく、いただくことにしよう」
中央のシートを限界まで倒される。その上で、私は組み敷かれた。
「へへへ、おいおい、さっきより断然汁気が増えてるじゃないか。お前、ジャカルタで露出趣味まで開発されちまったのか?」
「う、ウソです、そんな……」
笹山の指が膣内にズブリと挿し込まれ、攪拌される。いやらしい音が車内に響く。
「すまねぇな堂島、せっかくの新車がマン汁まみれにちまうかもしれんよ?」
「は、はい。構いません」
「悪いな。俺の次はお前に譲ってやるからよ」
男の凶器が、割って入ってきた。異様なほど熱を帯びた私の膣は、一突きで、大混乱に陥った。
「あっん、あぃぃぃぃぃっ!」
ゆっくりとだけど、その分大きなストロークで、腰が打ち付けられる。ドスンドスンドスンと、十往復もしないうちに、私は崩壊寸前まで追い込まれた。そのとき…
「おや、なんだこれは?」
小平の手が私のカバンの中を漁っている。絶対に触れられたくないものが、卑劣な男の手に渡ろうとしている。私は、絶叫した。
「やめて、それには、それだけは、触らないで!」
私の激しい反応は男達の好奇心を煽る結果にしかなかった。白い、シルク生地のポーチの中から、立方体のケースが取り出される。パカっという音を立てて開いたその箱の中から、今朝添田さんが私にくれた、婚約指輪が姿を現した。
「お願い、お願いだからそれに、触らないで、何でもしますから」
私はもう涙を流して、顔をくしゃくしゃにしながら哀願した。
今朝私は、添田さんにプロポーズされた。涙が出た。それは、多分嬉し泣きだった。だけど、その場でイエスとは言えなかった。こんな状態に堕とされて、彼のパートナーになるなんて、許されない。全て打ち明けて、この悪人たちと縁を切ってからじゃないと、添田さんを裏切り続けることになるから。だから、今朝は、少し考えさせてください、といって部屋を出てきた。
「うん、待ってるよ、いつまでも」
優しく笑いながら言う添田さんの顔が瞼の裏に蘇る。
「おいおいおいおい、なんて性悪女だよ全く。俺にハメられてマン汁垂れ流しながら、平気な顔で結婚するつもりだぜ。添田も本当に哀れだよな。可哀そうすぎて、萎えちまうぜ、はははは!」
「ば、バカにしないで、あなたに、何がわかるんですか!早くそれを返して、返しなさい!」
「ああっ?口の利き方に気をつけろよ、このアマ。ムカついたぜ、絶対返してやらねぇ。こんなもの、食ってやるよ」
「あああああああああああ!やめてえええええええっ!」
私が、まだ指を通すことすらしていない、その指輪。0.5カラットの大きなダイヤのついたその指輪が、あろうことか、この中年男性の口の中に放り込まれてしまった。私は、思いっきり絶叫した。
「うるせぇな全く。一日もすればクソと一緒に出てくるから、そしたら返してやるよ」
「…許せない、絶対に許せない、あなたのこと。ああっ、悔しい、殺してやりたい!」
「おぉおぉ、怖い怖い。はは、冗談だよ、冗談。飲み込むわけないだろ、ほら、ここにあるぜ」
笹山が突き出した舌の先にキラキラした光を放ったダイヤが乗っかっていた。迷わずそこへ手を伸ばそうとするけど、小平に手首を掴まれた。
「放して、放してよ!」
「ほら、口で、奪い返してみろよ、な?」
閉ざした唇を、笹山が私の口元に寄せてきた。こんな最低な男に、自分からキスをしないといけない。あの人がくれた、愛の証を取り返すために。
「む、むぅぅぅ、く、くぅぅ」
私は、唇と舌で、男と格闘した。男は、器用に舌を操って、指輪を頬と歯茎の間に隠した。私は必死でそれを追ったけど、全然取りかえすことができない。その間に、いっぱい舌を吸われて、唾液を飲まされた。そうこうしているうちに、また悪い癖が、出てきてしまった。
「ははは、ディープキスしてるうちに、オマンコがどんどんヒクついてきたぞ。どういう神経してるんだ、せっかくもらった婚約指輪が食われそうになってるっていうのによぉ?」
「……はぁ、はぁ、はぁ、もう、許して、お願いだから」
「イヤだね。俺のこと、殺したいんだろ?殺したいほど憎い男に昇天させられる女か、たまんなねぇな」
「ああ、やめて、そんなに、は、激しく、動かさないで!」
気付いたら、快感の頂に手が届きそうな距離にいた。彼を、添田さんを愛している。だけど、それと同じくらい深い部分で、不潔な快感を求めている。優しく、愛されたい。でも、同時に、悪党たちに踏みにじられたい。
「なぁ、結婚式には俺たち全員招待してくれるんだよな?」
「ははっ、それはいいな!お色直しの間に全員一発ずつハメさせてもらおうぜ」
「ついでに、どうですか?今日のオマンコシーンを皆さんの前で上映するのは?」
眩暈がするほど残酷な、冗談とも本気とも取れるような脅し文句を浴びせられながら、もう私は抗議することも、哀願することもできず、ただ身体を駆け抜ける恥と快感の波に震えていた。
自分の置かれた惨めな境遇に、心の底から興奮している自分を自覚する。
添田さんを愛する自分も、いやらしい悦びに耽る自分もどちらも本当の自分だ。恥ずかしくて、情けないけど、それが本当の自分なんだ…。
そんな考えが頭をよぎったその瞬間。必死で押さえつけていた何かが、私の中で砕けた。今までで味わったどの絶頂よりも、深くて、強くて、惨めで、そして長いそれが、いつまでも、いつまでも続いた。
(完)