[あらすじ]
人妻で美容師の弥穂は、夫の零士とともに小さなヘアサロンを開業する。だが時を同じくして、新型ウィルスの伝染病が日本で猛威をふるっていた。

客足は遠のき、ついにはロックダウンで街はゴーストタウン状態に。
ウイルスの全世界的な拡大を前に、夫婦の蓄えはみるみる枯渇していく。
友人で、地元の信用金庫に勤める下村にだまされ、零士は筋の悪い金を掴まされる。やがてヤクザまがいの借金取りが現れ、零士は強引に危険なウイルスの"除染現場”へと連行されてしまった。

最愛の夫と引き裂かれた弥穂。零士が過労によって倒れたことで、「返済の代わりに」と、弥穂は借金取りたちによって身体を弄ばれ、犯されてしまった……。

縋るような思いで下村に助けを求める弥穂。だが、卑劣漢の本性を現したその男の手で、決して引き返せない、性の奈落へと引きずりこまれていった…… 。

2026.01.23 永井 亮
凌辱、NTR
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絶え間なく嬲られる日々が、二週間ほど続いた。鴻上たちは、弥穂に難癖をつけては、会員カードの提出を渋ったので、弥穂の肉体債務返済は遅々として進まなかった。そんな中、ついに零士の退院が決まった。
また、新型ウィルスについては、店舗や学校の閉鎖を伴う政府の処置が一定の効果をもたらし、感染者数も低減してきていた。八月に入る頃には、政府の非常事態宣言も解除され、ようやく街に人手が戻ってきた。
さらには、海外で開発された治療薬に目覚ましい効果があることが実証されたというニュースも届いた。弥穂のクラス学生街にも、若者たちの明るい活気が戻ってきた。『サロン・ド・レイ』を再オープンするための環境は整いつつあった。

「零士さん、退院、おめでとう」
愛する零士と再び同じ部屋で寝食を共にすることができる。それは喜びに違いないのだが、退院する零士を迎えに行く弥穂の心中は複雑だった。
まず、鴻上達は依然として自分を買う権利を有している。たとえ今後身を売り続けて残りの会員カードを回収しきったところで、筑摩夫妻が自分を自由にしてくれる保証などどこにもない。鴻上や三島、須藤といった淫鬼たちがすぐ近所に棲んでいるし、店の頭上には筑摩夫妻の居室がある。弥穂が散々懇願してようやく得た譲歩は、
・『サロン・ド・レイ』の営業時間中は肉の奉仕は免除とする。
・プレイの際は二日前までに予約すること
というものだったが、裏を返せば、閉店時間後は零士を置いて鴻上たちの元に足を運ばなくてはならないということになる。須藤は弥穂を荒縄で拘束することを好み、麗奈の鞭は毎日のように弥穂の尻や背中を襲ったので、雪の肌には生々しい調教の後が絶えないのだ。
「しゅ、主人に見つかったら、大変なことになります。ああ、来週にはあの人が家に帰ってくるんです。もうそろそろ鞭は……」
「ふーん、何、それじゃああなた帰ったら零士さんと早速セックスしようってわけ?契約条件忘れちゃったのかなぁ?」

・乙は、甲の指示する者以外との性交を行う権利を有しない。乙の行政上の配偶者、園川零士についてもその例外ではない。

 麗奈は、このくだりを弥穂に何度も復唱させながら、一層激しく一条鞭を振り下ろした。
周りで調教の様子を見物していた鴻上ら三人の客に対して、麗奈は煽るように言う。
「皆さん、この女が浮気しないか、さぞかし不安でしょうね。弥穂はなにせ皆さんの共有物ですから」
 男らはわざとらしく頷く。
「この女が勝手に旦那とエッチしないように、部屋のあらゆるところに隠しカメラをしかけましたの。皆さんで見張って差し上げてね」
「ああ、そんな……」
在宅中、常時レンズ越しに悪鬼たちに盗み見られる。夜の営みも含めて、以前のような夫婦生活が戻ってこないことは、もはや明白であった。
さらに弥穂を不安にさせたのは、自らの痴態を収めた動画が、おそらく都合百時間以上は撮りためられているということだ。以前、麗奈は弥穂のスマホから連絡先情報を全て吸い出していた。
「ふふ、いいこと?もし逆らったり、逃げ出したりしたら、あなたの知り合い全員に動画の一部を送りつけるわ。良い買い手が見つかったら、高値で売りつけるつもりよ。あなたへの貸しはそこから回収させてもらうから」
 高校時代や美容学校時代の友人たちの顔がチラつく。さらには、表参道時代の同僚たちに至っては、零士の共通の知人でもある。結婚し、名声を得ながら独立した零士のことを、妬み、疎ましく思っている同僚も何人かいた。あの零士が新妻を中年男性の集団に寝取られている。そんな証拠のビデオを、嫉妬に駆られた男達なら大金をはたいてでも手に入れたい、そう思ったとしても、おかしくはなかった。

 ほぼ半年ぶりに同じベッドで寝る夫婦だ。零士が身体を求めてくるのは、ごく自然だった。
だが、隠しカメラの向こう側に、鴻上たちが手ぐすねを引いて待っている。弥穂は夫の誘いを「まだ身体を休めたほうがいいわ」とやんわり断る。零士も、無理強いはしないが、そうしたやり取りが二度も続くと、夫婦の間には気まずい空気が漂った。
隠しカメラのせいで、今は零士とセックスができない。そう自分を納得させようとするが、そうでなくても弥穂は今夫に抱かれる気になれなかった。自身の肉体は被虐の魔悦にすっかり中毒状態にさせられている。零士とのセックスがどのようなものになるのか、想像もつかなかった。
開発されきった肉体は、零士をどのように迎えるのだろう?狂ったように悶えるのだろうか。だが、もし筑摩や、あるいは鴻上に犯される時に比べて、深い快感が得られなかったら?弥穂は自分の身体の反応が夫を裏切ってしまうことが恐ろしかった。
鴻上ら三人の客や麗奈に性虐待を施され、身体を汚され、最後には省三とのセックスで浄化させられる。そんな淫らなルーティンを何度もこなすうち、弥穂の脳裏にはいつも筑摩とその異形の男根の陰がチラつくようになってしまった。そんな自分に、再び零士と暮らす資格があるのだろうか……?
日中の会話も、当然あまり弾まない。何とか平静を装い、沈黙を埋めようとして空虚な言葉を交わす時間が辛い。園川夫婦は、ぎこちない日々を過ごしながらも、店の再開に向けて淡々と準備を重ねていった。

 『サロン・ド・レイ』の再オープンは、零士の退院からちょうど一週間後の土曜日。金曜日には、再オープンに向けた店の掃除や、備品の確認、ウェブ予約の状況を確認したり、数は限られていたが過去の来店者にクーポンを発行したりとやれるだけのことはやっている。予約の数こそ、まだ二件ほどしか入っていないが、店の周りには人通りが戻っている。K大学が、教室での講義を再開したせいだろう、ここ数か月見られなかった若者たちが店の前を行きかっている。とにかく店を空けさえすれば、なんとかなるのではないか、そんな希望を持つことがようやく可能になった。そんな矢先……

「ごめんください。お邪魔かしら」
 声の主は、高級そうな女性用のスーツを着込んだ麗奈夫人だった。冷たい響きのするその声に、弥穂は思わずビクっと身を強張らせてしまう。
「ふふ、ようやく再開ね」
「おかげさまで、やっと店が開けられます。それもすべて筑摩さんご夫妻のサポートのおかげです。なんとお礼を言っていいか、分からないくらいです。本当に、どうもありがとうございました」
 夫が麗奈に対して恭しく頭を下げる様子を見ていると、弥穂にはたまらなく辛かった。自分たちがこの店舗にいられるのは、弥穂がその身を捧げているからだ。夫はそうともしらず、筑摩夫妻が善意で援助をしてくれているのだとすっかり信じ切っている。
「申し訳ないんだけど、弥穂さんの力を少し借りられないかしら?これを、うちの子、時彦のところへ届けてほしいの」
 麗奈の手には小包が抱えられている。
 省三には一人目の妻との間に時彦という名の長男がいた。歳は十八で、この春から都内の私立大学に進学している。だが、入学とほぼ同時にやってきた新型ウィルスによって、大学は閉鎖され、オンラインでのリモート授業ばかりで碌に友達もできておらず、部屋に引きこもりがちだという。それでも時彦が親元に戻ろうとしなかったのは、俊彦と省三の間の確執が理由だという。俊彦の母は省三に捨てられ、放逐された。俊彦がそれを根に持つのは、ごく自然なことだった。
 だが、時彦は後妻である麗奈とは馬が合ったらしい。麗奈は時折都内のマンションを訪れて面倒を見てやっていた。大学に提出する何かの書類の締め切り日を忘れており、今日中に至急手配が必要なのだが、麗奈夫人は生憎急な仕事の打ち合わせが入ってしまったのだという。
「あの、今日じゃないといけませんか……明日から、お店を開けるので、ちょっと」
「あら、都合悪かったかしら?うーん、どうしようかなぁ……」
「あ、いえ、大丈夫、大丈夫です!弥穂、筑摩さんが困っていらっしゃるんだ、さぁ、早く行って!」
「あ、あなた……」
 金銭的な負い目が零士にここまで卑屈な態度を取らせてしまうのか。
「良かったぁ。それとねぇ、今日のお会いするお客さんはほんとに重要なの。だからちょっと髪の毛も整えて、ブローもしてもらいたいんだけどいいかしら?ふふ、安心して、ちーゃんとお代は払うわよ」
「い、いえ、そんな、いただけません」
「そぉ?ふふ、悪いわね。じゃ、お言葉に甘えて。あれ、弥穂さんあなたまだいたの?ああ、そうね、住所をおしえてかなったわね。はい、これ」
 弥穂は麗奈に走り書きのメモを押し付けられ、店を追い出された。夫の前でさえ、あのように高圧的な態度を取る麗奈夫人のことだ、麗奈は今後も自分を、いや自分たち夫婦を顎で使い、女王のように振る舞いつづけるのだろう。
駅に向かう間、弥穂の胸を不安が締め付けた。零士と麗奈夫人が、店の中で二人きりでいる。麗奈が零士の入院中に弥穂が体験したことの一部でも言及したり、仄めかしたりしているのではないか?そう思うと、気が気でなくなる。(荷物を届けたら、すぐに引き返さなくちゃ……)
だが、駅のホームで上りの電車を待つ間、弥穂のスマホに麗奈からメッセージが入り、弥穂は天を仰いだ。

あなたの旦那さん、独り占め中♪
そうだ、言い忘れたけど、時彦君、だいぶ精神的に病んでるから、部屋とか散らかってると思うの。掃除とか洗濯もよろしくね♪
 

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