これを読んでいる人は(今のところ誰にも読ませるつもりはないのだけれど)、きっと呆れてしまうと思う。こんなに後悔して、自己嫌悪に苛まれているのに、私はさらに救いようのない罪を重ねた……
無理やり結合を解いて、起き上がった私がパンティを拾い上げると、カレは言った。
「俺の精子、中に入れたまま彼氏の家に行くのかよ」
添田さんの部屋に着いたら、すぐにシャワーを借りるつもりだった。まだ、それくらいの時間は残っている。成田空港から、カレの自宅の大井町まではだいたい九十分くらい。反対に、ここ(品川駅の港南口だ)から大井町までは、たった一駅なんだから。
でも、よく考えてみれば、それはひどい行為だ。
添田さんの部屋の浴室。その排水溝に流れていく、西條君の精液
その連想は、下着を身につけようとしていた私の手を止めた。
「俺が責任持って、始末してやるよ」
「ちょっと、何を……」
カレが私の手を引いて、無理やり裸のまま便座に座らせた。
カレの細長い指が、『ビデ』のボタンを押した。グォーンという鈍い作動音の後で、暖かい湯が、私の腫れた内側を撫でた。水流と私の性器の間で弾ける飛沫の中を、カレの指が潜りこんできた。
「い、いやっ、そんなこと……」
「こうしなきゃ、取れないだろ」
カレは、どういう気持ちでこんなことをしたんだろうか。私を、困らせるためだろうか?初めは、サディスティックな悪戯で私をいじめて、楽しもうとしたんだと思う。でも、カレはすぐに不機嫌な表情になった。せっかく私の中に植え付けた自分の存在を、自分で掻きだすことに、ひどく苛立っているように見えた。
その指先は、段々と乱暴になっていった。膣の襞にこびりついた精液を掻きだす目的も忘れて、内壁部分自体をコリコリと音が立てそうなほどスクラッチしてきた。指先が、私の敏感な部分を見つけ出すと、しつこくそこばかりを責めた。
「へ、変な触り方、しないでよ、もうっ……ん、むぅぅんっ……」
「ねぇ、摩耶さんの彼氏、こういうことしてくれるの?僕、指長いから、こういうこともできるよ」
カレの右手の中指の先が、私の膣の天井部分の、ざらついた箇所をグイグイと押す。そうして外側から、親指が円運動をしながらクリトリスの包皮を剥いて、中の敏感な部分を転がした。でも、それだけじゃなかった。その夜のカレは、長い薬指で、私の裏側の穴にまで、悪戯をしてきた。
「そ、そこは!違うでしょ!ダメだからっ、あ、あああんっ!」
「三か所同時。されたことあるの?その、彼氏さんに」
カレが、左手で私の髪を撫で、顔を間近に覗き込みながら言った。私は、答えられなかった。そんなことされたことは、もちろんなかった。でも、ない、と答えるのは悔しかった。
「ないんだね。聞かなくてもわかるよ。この慌てっぷりを見てたらね。ふふふ、少し、続けてみようか」
つい数秒前までの不機嫌がすっかり姿を消して、西條君は興奮した笑みを浮かべていた。このまま続けていれば、私がすぐに達してしまう。その見通しがついたとき、カレはいつもそんな意地の悪い笑顔を見せつけてきた。
「も、もう、いいから、止めて!十分だからっ、くっ、くぅぅぅぅ……」
「ねぇ、質問していい?そもそも、その添田さんって人、摩耶さんのこと、ちゃんとイカせてくれるの?」
胸が抉られるように感じた。実際のところ、西條君に犯されるまで、絶頂というものを知らなかった。あれから、一度も添田さんには会っていないのだから、当然、答えはノーということになる。
でも、それを口にするのは、添田さんへの侮辱だ。私は、イクという行為なんかとは別に、あの人とのセックスで、心の底から満たされている。自分が、生きていてもいいんだって、そう思えたほどに。イクとか、イカないとか、そんなことだけが問題じゃないんだって、しっかりそう説明したかった。
けど……敏感な部分を、同時に三か所も苛められているから、言葉が上手く出てこない。苦し紛れに、私は嘘をついた。
「も、もちろん、あるわよ。たくさん、たくさん、イカせてもらってるんだから、う、うぅぅぅぅ、ああああっ、だめ、ダメっ、いっ、イクッ……!」
反抗する私を罰するように、西條君の指先の動きにギアがかかる。私は、仕留められた。とっさについたその嘘が、私の罪を、次のステージにアップグレードさせてしまった。