里穂の受難は続いた。不運なことに、昼休み明けの授業は自らが受け持つクラス、すなわち染谷雄星と原口宗介のいるクラスだった。
担任教師の弱みを握った二人は、危険な挑発行為を仕掛けて、里穂を揺さぶった。最後尾の列に座った二人は、ほんの数分前に奪ったばかりのパンティをわざとらしくヒラヒラと振り回したり、匂いを嗅いでみせたりする。そうして、里穂が教壇の上で青ざめる様を愉しんでいる。もちろん里穂はそれを注意することもできない。ただ、周りの生徒の目に気づかれることがないよう、祈ることしかできないのだ。
「先生、ちょっと質問、いいかな?分からないところがあるんだ」
授業が終わると、雄星と宗介は、教壇で里穂を左右から挟撃した。適当で中身のない質問を繰り出す間、二人は教卓の裏側で、里穂の尻肉をスカート越しに好き放題に揉みこんだ。それでも敢えて凛然とした態度を崩さない里穂を試すように、二人はニットセーターの腕の部分をグイグイと両側から引っ張りはじめた。Vネックの首元はだらしなく広がり、肩口から、パンティと同じ純白の肩紐がチラチラと除く。
(何をやってるの、やめなさい)
もはや平然とした態度は保つことはできず、視線で訴える里穂に、宗介が小声で囁く。
「僕、ブラも欲しかったんだよね。脱がしてあげようか、いま?」
休み時間の教室で、他の生徒の面前にもかかわらず公然と痴漢行為が行われていることに、頭がクラクラして、現実感がない。里穂は、二人の腕をやんわりと払いのけ、質問に答えるフリを続けた。
それならば、と二人の魔手は再び教卓の下の下半身へと移った。膝裏から内腿をたどって、じりじりと北上してきた。(だめ、この子達、どこまで…)
プリーツスカートの下は、ストッキングすら纏わぬノーパンなのだ。このままいくと、女性器にまで触れられてしまう…。
平静を装いながらも、二人の手を振り払おうとするが、雄星が舌打ちすると、里穂は恐怖で萎縮してしまう。周りには聞こえないほど、消え入りそうな声で里穂が囁く。
「お、お願い、ここでは、やめて…」
すると、雄星が里穂の日誌にそっと付箋を貼りつけた。
明日、早朝7時。弟と一緒に水泳部の部室まで来ること。かならず、姉弟揃って
「…わかったわよ、そうするからもう…」
女教師は、明日も弄ばれることと引き換えに、なんとかその場を解放された。
(どうしよう…純平に、なんて説明すれば…)
その日の帰路。里穂の脳裏には、これから姉弟を待ち受けている悲惨な未来が浮かんでいた。受け持ちのクラスの問題児二人組に、決定的な弱みを握られてしまった。そして、二人は自分の肉体を性欲の捌け口にしようとしている。そんな二人から早朝に、人気のない構内に呼び出されている。しかも、場所は水泳部の部室だ。雄星と宗介は水泳部の中心的存在。つまりそこは彼らの「縄張り」なのだ。どう考えても、無事で済むはずがない。
このままでは、生徒たちの好き放題に操られる日々が待っている。
(何とか、しなきゃ…)
だが、考えは一向にまとまらないまま、純平の待つ自宅に帰り着いてしまった。
「お姉ちゃん、お、おかえりなさい。…ど、どうだったの?」
「純平、ごめん…お姉ちゃん、負けちゃった…」
里穂は、涙ぐみながら、今日の顛末を語った。
「ほんとに、ほんとにごめん。お姉ちゃんが、バカだったのよ、ぅぅぅ」
姉弟は、呪われた運命を嘆き、啜り泣きながら、互いの身体を抱き寄せあった。
