「お、お客様?どうかされましたか?」
「な、何でもありません。あ、あの、進めてください…」
その日の午後、授業のない時間帯に里穂は学校を抜け出し、銀行カウンターに並んでいた。
教え子たちに現金も毟り取られ、際限なくクレジットカードで浪費され、早晩預金の残高が尽きてしまうことが目に見えていた。里穂は、純平の大学の学費にと積み立てていた定期預金を解約せざるを得なかった。途中解約の場合の手数料などのデメリットの説明を受けているうち、惨めさで思わず涙が込み上げてきたのだ。
書類にサインする間、生徒達の無遠慮な会話が、頭の中で響き渡っている。
「へへ、うちらってほんといい先生に恵まれたよね」
「こんなに好きなものなーんでも買わせてくれる先生、日本中どこにもいないよねぇ、うふふ♪」
「お前らはほんとにいい気なもんだよ。僕と宗介は身体張って先生を満足させるっていう大仕事をやってるんからともかくとして、お前らはただ乗りじゃないか」
「なによ、偉そうに。あんたたちの方こそ、盛りきった犬みたいに涎垂らしながらやりまくってるだけじゃない」
「あ、そうだ、先生。言い忘れてた。これからうちらのテストの点数は、全部満点でお願いね」
「おいおい、勉強もしないで全部満点じゃあさすがに親にも怪しまれるだろう。せめて九十点前後くらいで適当に調整しておいてくれよ、な、先生」
(ああ、もう、こんな風に生徒に好き放題にされて……最低だわ、私…)
隷従と屈辱の日々は続いた。始業の直前まで雄星と宗介に突き上げられる、あるいは理沙と美玲に色拷問にかけられたりするせいで、授業もどこか身が入らない。文法やイディオムの解説もすっ飛ばして、気が付けば生徒たちに教科書を朗読させてばかり。困惑する生徒達の表情で、はっと我に返る有様だ。
特に里穂にとって辛かったのは、担任している2年E組の授業だ。授業中にも関わらず、雄星や宗介が、手に取ったスマホで里穂とのセックス動画を再生し、それを見せつけてくるのだ。音声こそミュートにしているので、見て見ぬふりをするのだが、内心恐ろしくてしかたがない。もし何かの拍子に手が滑ってスマホが床に落ちたら?そうしてそこから自らのあられもない嬌声が鳴り響いたら?
そんなふうに想像すると、背筋が凍りつく。時間が経てば経つほど、自らの立場が悪くなっていく。なんら打開策が見いだせないまま、女教師はズルズルと生徒達の言いなり奴隷に身を堕としていった…。