「ああ、麗奈奥様!どうか、お許しを!ああ、い、痛い、痛いです!」
鴻上の経営するドラッグストア内の事務所で犯されたその日の深夜零時。弥穂は筑摩邸のリビングにて、全裸で鞭打ちの刑に処されていた。
麗奈の手が握っているのは、調教用の一条鞭だ。弥穂の雪白の肌の上に、既に幾重もの線状のアザが走っている。
一糸纏わぬ全裸にされ、手を膝についた中腰の姿勢を取らされている。せめて器具で拘束された方がまだマシだったかもしれない。自らの意志で態勢を維持しないといけないわけだが、あまりに激しい痛みで、つい手が鞭の攻撃を防ごうとしてしまう。そんな弥穂の反応は、麗奈の腕の振りを益々激しくしたことは、言うまでもない。
「腹が立つわ、ほんとに。さっきの鴻上さんと三島さんが言っていたわよ。お前が、とっても気持ちよくしてくれたお礼に進んでカードを返したんだってね。違うのかい」
「誓って、誓って、そのようなことはありません!何度も、何度もお願いしたんです。ですが、遅刻したとか、余計な費用が掛かったからといって、断られたんです……ああ、どうか奥様、信じてください」
***
十五分遅刻したばかりに、弥穂は鴻上の当初予約時間三時間に加えて、二時間を無料で嬲られる羽目になったが、受難は連鎖的に続いた。その余分な二時間のせいで、後ろの時間帯に予約を入れている三島のもとに到着する前に、自宅で身を清める暇すらなくなってしまったのだ。
弥穂は、鴻上から三度目の精を膣奥に吐き出された時、もう三島の予約時間まで十五分も残っていないことに気づいて、慄然とした。弥穂は急いで着衣し、三時間分のカードを受け取ると、一目散に駆け出した。
三島の指定場所は、「三島税理士事務所」脇の契約駐車場に止められた乗用車だった。予約開始時間とほぼ同時に、息を切らせて駆け付けた弥穂を、三島が助手席に招きいれた。
「今日はサクッと一時間、カーセックスで済ませようと思ってね。これから見晴らしのいい高台にでも行って、ロマンティックに行こうか」
初め上機嫌だった三島だが、弥穂の様子がおかしいことに気づくと、表情を曇らせた。
「なんだ、奥さん、臭うぞ」
「も、申し訳ありません……。つい先ほどまで、鴻上さんのところにおりまして……」
「はぁ?こっちは親切にちゃんと二時間空けて予約してるんだぞ!前の客のザーメン抱えたまま来るなんてありえないだろう!」
狭い車内で怒鳴り散らす三島の前で、弥穂は身を固くし、ただ平謝りするしかない惨めさに耐えた。
「ちっ、余計な時間と金かけさせやがって。方針転換だ、ホテルにいくぞ」
結局、三島は手近な格安ラブホテルで弥穂にシャワーを浴びさせた後、たっぷり三時間若妻の肉体を愉しんだ。弥穂は三島に対して、三時間分の「利用券」の提出を求めたが、三島はガンとして譲らなかった。
「私は元々、一時間、車内で軽く遊びたかっただけなんだ。汚いザーメン腹に抱えてやってきたのはそっちの都合だろ?それに、ホテル代だってかかってるんだしな。俺が渡すのは一枚ぽっきりだ」
場末のラブホテルの利用料など五千円程度のものだ。「利用券」の価格は一時間五万円なのだから比較にならないのだが、結局押し切られてしまった。
弥穂は、回収した利用券を必ずその日のうちに筑摩家へ納めることを義務付けられていた。もう夜遅かったが、その日も三島から解放されると、弥穂は筑摩邸を訪れていた。午後一から丸々不在にしていたというのに、鴻上から三枚、三島からは一枚の計四枚しか弥穂が回収できなかったことを知り、麗奈は激昂し、鞭での仕置きに至ったのだ。
***
「正直に言わないと、ここにも鞭が飛ぶわよ、いいの?」
一条鞭の先端が、クレバスをなぞる。尻や背中を打たれるだけでも、絶叫するほどの痛みなのだ。女体の中で突出して敏感なその部位を打たれたら……想像するだけでも気絶するほどの恐怖だ。麗奈は、弥穂が鴻上や三島のウソを全面的に認める回答しか受け入れないだろう。真実を捻じ曲げてでも、支配者の言い分に屈するしかない奴隷の身分の哀れさを噛みしめながら、弥穂はついに音を上げた。
「ごめんなさい、麗奈奥様。弥穂が、ウソをついておりました。私、あまりにその、感じてしまって、私ばかり楽しんでしまったのが申し訳なくて、カードを時間通り受け取れませんでした。本当に、申し訳ありません、もう二度としませんから、どうかお許しを!」
弥穂が切実な哀願を叫んでいるうちに、省三が帰宅した。
「麗奈、ちょっとやりすぎじゃないか。肌がボロボロになってるじゃないか」
「ああ、筑摩さん……」
救いを求めるような視線を省三に求める弥穂が、余計に憎らしいのか、麗奈は思いきり弥穂の臀部に膝蹴りを食らわせた。うつ伏せで床に崩れ落ちた弥穂の側頭部を麗奈の足の裏が踏みつける。頬が床に無理やり押し付けられ、満足に言葉を発することも許されない。
「あなた、この女、鴻上さんと三島さんとのセックスが気持ちよすぎて、ただでやらせたみたいよ。どうする?」
「本当なのか、弥穂」
(違う、違います、私は、無理やり……)
顔を踏みつけられていては首を横に振ることも、言葉を発することもできない。ただすがるような視線を省三に送る可憐な若妻の被虐美は、省三の劣情を思いきり掻き立てた。
(実際、省三はこの時間まで手籠めにした別の女を須藤のクリニックで嬲っていたところだったが、弥穂の哀れな表情や、鞭うたれて赤く荒れあがった尻や腿を見ると、瞬く間に肉棒に血が滾ったのだった)
「まあ、いい私がじっくり寝室で話を聞こうじゃないか。二人きりでな」
麗奈は、夫と一緒になって弥穂を痛めつけたいと思っていたのに、やけにジェントルな省三の様子に、苛立ちがピークに達した。
「頭に来るわ。私はちょっと出てくるから。好きにすればいいじゃない」
麗奈は乱暴にドアを開いて、そのまま出ていってしまった。
「さぁ、もう怖がらなくていいぞ。本当のことを話してみなさい」
省三は、やけに優しい声色で、弥穂に対して気遣いを見せる。板の間に突っ伏した弥穂を、「お姫様ダッコ」の形で抱きかかえると、寝室の大きなキングサイズベッドにうつ伏せの姿勢で横たえた。弥穂はポツリポツリと本日自分が陥った災難を口にしていく。
「そうか、大変だったな。苦労かけて、すまない。麗奈には私からよく言っておくから、君はもう気にしなくても構わないぞ。まだ痛むだろう?」
赤く充血した背中のアザに、省三の舌先がそっとを寄せられる。さらには、子猫のようにペロペロと舐め上げ始めた。そこには、無理に性感を掘り返すような魂胆は感じられず傷を癒そうとしてくれているようにさえ思えた。優しい舌の愛撫が背中から尻、内腿の付根辺りまでに隈なく広がっていく。同時に、心の中に温もりが宿ってくる。弥穂は、困惑した。
(ああ、ダメよ、騙されてはだめ。この男は、私を、食い物にしている張本人じゃない。こんな風にして、私の気持ちまで、操るつもりなんだわ、負けちゃだめよ、絶対に)
下村にまんまと裏切られた記憶もまだ新しい。徹底的に嬲られた後に、優しくされると自分は脆い。そう自覚しているだけに、二度とこうした手口には引っかからないと固く誓ったのだ。
だが、偽りの優しさであると分かっていても、それに身を任せてしまいたい欲求は抑えがたい。もしかしたら、この男は悪い人間ではないのではないか、むしろ自分を虐げていることに本当は心を痛めているのではないか、などという甘い考えが、ムクムクと立ちあがってくる。DVの被害女性が、加害男性との間で共依存関係に陥る例は枚挙に暇がないが、今の弥穂の精神状態も、それに近いものがあった。
鞭の跡を舐められ、労をねぎらわれるだけで、心が震えてしまう。(こんな私に、こんなに親切にしてくれている……)
こんな卑屈な考え方など、ほとんど奴隷のそれではないか。このままではいけない、人間としての、女としての矜持を守らなくては、夫に顔向けできない。理性はそう叫んでいる。だが、それと同時に、このまま無力で、無知性の玩具に堕ち、男の寵愛だけを乞うて生きていくのが、自分には似合っているのではないか、という極端な考えすら胸の内を去来する。
「私には弥穂、君が一番大切なんだ」
「もう少しの間の辛抱だよ。カードをあいつらから全部回収したら、もう君に指一本触れさせない」
「君を取り戻したい。私だけの愛人にしたいんだ。受け入れてくれるね?」
やがて省三の舌に耳朶を甘噛みされ、歯の浮くような口説き文句を吹き込まれると、返す言葉は、いつの間にか甘ったるく、媚びるような声色になってしまう。
「……私を、もう苛めないで、辛いんです……」
「ああ、すまないと思っているよ。私も辛いんだ、君をあんな奴らに汚されると思うと、胸が痛むよ」
「……ご主人様、ああ、私どうしたら……」
こんなにも自然に「ご主人様」という言葉が口をついて出てくる。弥穂は、うつ伏せから仰向けに向き直り、省三を真正面から見つめた。覆いかぶさるような姿勢で、省三の舌が弥穂の口腔にむしゃぶりつく。弥穂も、情熱的にそれに応えてしまう。互いの存在を確かめ合うように、相手の舌を固く吸い上げる。
ディープキスを続けながら、省三の巨根が、弥穂のヴァギナに侵入した。十分すぎるほど蜜を滴らせた媚肉だったが、それでも省三のサイズを受け容れるのは容易ではなかった。
「う、ぅぅぅ、ご主人様、ああ、あ、アソコが、むぅぅぅ裂けてしまいそう」
「痛いか?」
「ああ、大丈夫です、平気ですから抜かないで!」
腰をそっと引きそうになる省三の腰を、左右の足で挟み込む。夫の零士にもしたことがないほど積極的な求愛をしてしまう自分に、弥穂は震撼した。だが、省三のシリコン玉付きの王冠部を膣内に呑み込んでしまうと、全ての思考は押し流された。グロテスクな瘤で繊細な膣の内部構造を引っ掻き回されると、弥穂は省三の背中にしがみつきながら哀しい悲鳴を吹き零してしまう。
女の弱みをさらけ出し、眼にはもう大粒の涙を浮かべながら、弥穂は自らも腰を振り立てはじめた。正常位だというのに、男のピストン運動だけでは足りない、とばかりに自らの腰をグラインドする。我が身の淫猥さに、弥穂はもう抵抗感よりもむしろ昂ぶりを覚えた。
(ああ、零士さん、ごめんなさい。許して、私だって、辛いの……)
ふと夫の顔が瞼の裏に浮かぶが、今の弥穂にはそれすら厭わしい。今は、今だけは弱く、哀れで淫らな自分に耽溺していたかった。
「あいつらにやられた後は、必ずその日のうちに私に抱かれろよ。私の魔羅の形をしっかり覚えておいてほしいんだ」
「はい!どうか、抱いて、ダメな私を、いっぱいおチンチンで、お仕置きしてください」
強いられたわけでもないのに、マゾの口上が飛び出す。墜ちきってしまった自分への嫌悪感も、肉の悦びを抑制する理性も、もはやそこには存在していなかった。省三のピストン運動の度に身体を打ち震わせ、快感を貪る浅ましい肉の塊と化した自分に、弥穂は心地よさすら感じているのだった……。
[あらすじ]
人妻で美容師の弥穂は、夫の零士とともに小さなヘアサロンを開業する。だが時を同じくして、新型ウィルスの伝染病が日本で猛威をふるっていた。
客足は遠のき、ついにはロックダウンで街はゴーストタウン状態に。
ウイルスの全世界的な拡大を前に、夫婦の蓄えはみるみる枯渇していく。
友人で、地元の信用金庫に勤める下村にだまされ、零士は筋の悪い金を掴まされる。やがてヤクザまがいの借金取りが現れ、零士は強引に危険なウイルスの"除染現場”へと連行されてしまった。
最愛の夫と引き裂かれた弥穂。零士が過労によって倒れたことで、「返済の代わりに」と、弥穂は借金取りたちによって身体を弄ばれ、犯されてしまった……。
縋るような思いで下村に助けを求める弥穂。だが、卑劣漢の本性を現したその男の手で、決して引き返せない、性の奈落へと引きずりこまれていった…… 。
人妻で美容師の弥穂は、夫の零士とともに小さなヘアサロンを開業する。だが時を同じくして、新型ウィルスの伝染病が日本で猛威をふるっていた。
客足は遠のき、ついにはロックダウンで街はゴーストタウン状態に。
ウイルスの全世界的な拡大を前に、夫婦の蓄えはみるみる枯渇していく。
友人で、地元の信用金庫に勤める下村にだまされ、零士は筋の悪い金を掴まされる。やがてヤクザまがいの借金取りが現れ、零士は強引に危険なウイルスの"除染現場”へと連行されてしまった。
最愛の夫と引き裂かれた弥穂。零士が過労によって倒れたことで、「返済の代わりに」と、弥穂は借金取りたちによって身体を弄ばれ、犯されてしまった……。
縋るような思いで下村に助けを求める弥穂。だが、卑劣漢の本性を現したその男の手で、決して引き返せない、性の奈落へと引きずりこまれていった…… 。
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