翌日から、弥穂は筑摩家の家政婦兼性欲処理人形であるばかりか、好色漢三人の娼婦の役割まで担わされることになった。睡眠中以外のほとんどの時間を筑摩邸で時間を過ごし待機することを強いられる。客の予約時間の開始の一時間前にもなると、麗奈は弥穂をシャワー室に呼び出し、ねっとりとした手つきで裸身を撫ぜる。一つには身体を清める意味もあったが、客に身体を弄られた時に、秘肉がしとどに濡れそぼっているように、「仕込み」をすることが目的だった。
「ふふ、チューニング、バッチリね。じゃ、いってらっしゃい」
初めて正式に客として弥穂を抱いたのは、須藤だった。診察時間を過ぎ、看護婦や事務員も退勤した後の「須藤内科クリニック」へと呼び出された。
須藤は弥穂を診察台に乗せ、手足を拘束するが、いきなり覆いかぶさったりはしない。ほとんど真一文字に近い形で開かれた両脚の奥の花園を、金属製の器具で無理やりに開口されている。
「なるほどな。あの包み込むような圧の正体はこれか。これだけ複雑な隆起をした膣畝は滅多に見られないぞ。せわしなくヒクヒクヒクヒクして実に気持ちよさそうだ」
「……もう、おっしゃらないで、は、恥ずかしいです」
元々診察室の照明は明るかったうえ、須藤はペンライトで弥穂の秘部を照らし出し、詳細な観察を延々と続けている。
「ふふ、そうかそうか、恥ずかしい思いをさせられると濡れるんだな。どんどん粘っこいのが染み出してくるじゃないか」
身体には特段刺激を与えているわけではない。須藤の視線と言葉で嬲られるだけで、ジーン、ジーンという熱がヴァギナから湧き出てくるのだ。
「この前は坐位だったな。今日は私が腰を振ってやるから、しっかりヨガリ鳴くんだぞ」
前戯れも一切ないままに挿入されたが、麗奈によって事前に煮込まれた女の肉は、亀頭の侵入を柔らかく受け入れるやいなや、熱っぽく須藤のペニスに吸いついた。
「ふふ、私とやりたくてまるで漏らしたような具合だな」
「ちっ、違いま、すっ、うぅぅ!」
反論をペニスの突き上げで封じるのが、須藤の趣味だった。筑摩邸で初めて交わった時同様、弥穂は須藤の老獪な腰使いに、何度も絶頂させられた。
三島は妻子持ちであり、また経営している税理士事務所は自宅も兼ねた一軒家だったので、独身の須藤と違って自分の根拠地に弥穂を呼び寄せることはできなかった。三島は、弥穂を「サロン・ド・レイ」の店舗で犯すことを希望した。
「お願いです、ブラインドを、下ろさせてください。これでは、見えてしまいます!」
夜九時過ぎの店内で、弥穂は一糸纏わぬ全裸に剥き上げられていた。待合のソファーに腰かけた三島の眼前で、両腕を頭の上に組み、両足を蟹股に開く屈辱的なポーズを強いられている。室内の照明は全て切っていたが、ガラス張りの店の入り口には街灯からの光が差し込んでいる。店の前を通る者が目を凝らせば、女の裸身に気づいて白目を剥くだろう。
「なに、明るい場所から暗い場所はそんなによく見えないものさ。それに、閑古鳥の店だろ?ちょっと刺激的な噂が広まるくらいの方がちょうどいいじゃないか、宣伝になるぞ」
「ああ、そんな恐ろしいこと、おっしゃらないで!」
そんな噂が立てば、店の再建は覚束なくなる。いや、なにより今はインターネット全盛の時代。もしそうした目撃談がネットで拡散しようものなら、やがて夫の零士の眼にも触れることになる。店も、夫婦関係も崩壊させられる。弥穂は許しを請うような瞳で、薄暗がりの中の三島を見つめる。
「ブラインドなら、閉めてやってもいいが、その代わり、こっそり尻をやらせてくれよ」
三島は悪魔の取引を持ち掛けて弥穂を揺さぶる。省三本人、あるいは麗奈によって、アヌスの状態は毎日「点検」されている。省三の尻穴への妄執ぶりは異常とも言えた。
「もし私に内緒で連中とアナルセックスをしたら、奴らだけではなく、弥穂、お前にもキッチリ罰を与えてやるからな。二度と表を歩けないくらいの恥をかかせてやる、いいな」
省三に吹き込まれた脅し文句が、耳の奥で木霊する。禁を破った場合にどのような罰が待っているのか、想像すらできない。
「それは、禁止されていますから……」
もっとも、三島とて省三のアヌスへの執念の強さはよく理解していたので本気で言っているのではない。ただ動揺する弥穂の様子を見て楽しみたいだけだったのだが。
「だったら、ここで、このままオマンコハメハメするしかないよなぁ。ほら、来いよ」
弥穂は、諦念から天を仰ぎ、やがて三島の、既に剥き出しになった肉棒を自らの中に招き入れた。対面坐位の姿勢で交わる。弥穂の顔は全面ガラス張りの外装を通して、戸外に晒されている。胸より下は三島の身体とソファで隠される形にはなるが、男の膝上で妖しく揺れる女体の様子は、どうみてもセックスの最中である。
ウィルス感染対策のための非常事態宣言は継続中であるため、不要不急の外出(特に夜間)は自粛を要請されていた。それゆえ、表を歩く人影は少なかった。とはいえ、皆無、というわけではない。
フードデリバリーサービスの若者の乗った自転車が、店の前辺りで停止した。
上のマンションの住民が、注文したのだろう。マンションの入り口が少し奥まったところにあるせいか、周りをキョロキョロしている。
「ああ、見つかってしまいます!」
何とか顔を三島の肩の裏に隠そうと、弥穂は身を丸くする。だが、三島に後ろ髪をグイっと引かれ、顔を上げさせられる。街灯の光が、切迫した若妻の悩ましい表情に注ぐ。宅配の若者と目が合うのが恐ろしく、視線はあさっての方向に向ける。そうすると、若者の様子が分からず、不安が募る。たまらず、恐る恐る視線を停車した自転車の方へ向ける。若者は宅配を終えて、再び自転車に乗り、背中を向けて漕ぎ出すところだった。どうやら、見つからずに済んだらしい。
「こんなの、危険すぎます。ねぇ、お願いですからせめて、もう少し店の奥で……」
「奥さん、ほんとはスリル満点が大好きな癖に。あの自転車の坊主が来てから、マンコが一層忙しくヒクヒクしやがる。アソコは正直だなぁ、ははは」
「ウソ、ウソです、そんなこと……ああん」
緊張で心拍数が高まったのは事実だが、膣の内部構造までがそれに連動するとは。否定するものの、覚えがないわけではなかった。己の肉体の浅ましさに、弥穂は一瞬自己嫌悪に陥ったが、極度の緊張が解けた反動からか、欲情の制御が利かない。自ら腰をグリグリとグラインドして、官能を貪ってしまう。初めてこの店で鷹藤達に輪姦された時から、色責めに継ぐ色責めで、弥穂の肉体は、すっかり淫らな変動を遂げてしまったのだ。