次のプレイに映る前に、弥穂は自らの小便で汚した床を清めさせられた。
「ほら、雑巾だよ」
リビングの床に浮かんだ湖に、下村が白い布を投げ込んだ。
「ああ、これは!」
よく見ると、午前中に夫を見舞った際に来ていた、ノースリーブのワンピースだった。筑摩邸に足を踏み入れる際に、いつも通り脱衣させられたものだが、それを雑巾代わりに尿をふき取れというのだ。夫との思い出の品を、悪辣な苛めの小道具に使われるのは、たまらなく辛かったが、そのことを抗議したとしても、救いが与えられることはまずないだろう。弥穂は奥歯を噛みしめながら、屈辱に耐えた。真っ白く、程よい光沢感のある生地が見る見る黄色く染まっていく。そのうえに、弥穂の涙がポタリ、ポタリと零れ落ちた。もう傷つけるのはやめてほしい、という無意識の嘆願であったが、それは男達の同情どころか、さらなる劣情を誘う一方だった。
弥穂のワンピースが、小水をようやく吸い取りきると、プレイは再開となった。弥穂は既に尿にまみれた水着を脱がされた。
「おお、おお、ものすごい乳やなぁ。乳首もうっすいピンクやないか。ビデオで見た通りや」
「いや実物だとずっと迫力がありますよ」
鴻上と三島が、感嘆の声を上げる。どうやら、男達は省三から、弥穂の痴態を収めた動画を事前に共有されているのだろう。
「さてさて、お待たせいたしました。次こそ、弥穂にはいいところを見せてもらえると思いますよ。おしっこも垂れ流しの二十六歳ですが、膣の締りは、すごいんです。借金取りに犯されるまでは、経験人数はたったの一名だったので、まだまだあそこの中は新鮮ですわよ。といっても、旦那さんと離れ離れになってからは急激に使いこまれてますけど、くくっくく」
「ほぉ。で、今この奥さんは何人の男とやった計算になるのかね、ご主人以外で?」
三島が興味津々の様子で尋ねる。質問をはぐらかすことは、この場の空気から決して許されないだろう。
「……六人、です」
石黒、鷹藤、西野、稲田、下村、そして省三。忌まわしい凌辱の連鎖が、フラッシュバックする。犯されるには至らなかったが、子安や橋詰、晴天の下で口唇を犯した工事作業員たち、そして女の坂上香苗や小峰玲子といった顔も思い浮かぶ。
「男、という意味ではそうでしょうねぇ。でも女の私も合わせたら七人ということになるわ」
「なんや、もう麗奈さんもちゃっかりお楽しみかいなぁ」
一同が卑猥な笑みを零す。恥ずかしさに、消え入りたげに肩を震わせる弥穂を舐めるような視線が集まる。(ああ、きっと、最後にはこの人たちとも……)考えたくはなかったが、この流れで、犯されずに済むと楽観することは難しかった。
いつの間にか、下村によってリビングの中央には小さな丸椅子が二つ据えられていた。麗奈に命じられ、弥穂は左右の足をそれぞれの椅子の上に乗せた。矢のような視線がM字型に割られた股間に降り注ぐ。
「いや、み、見ないで」
思わず、弥穂は両手で秘部を覆う。待ってました、とばかりに、背後の下村が弥穂の腕を背中側に捩じり上げた。すると冷たい金属の感触が手首に走る。(ああ、まさか)次の瞬間、カチャリ、という乾いた音が鳴る。弥穂は両手首を後手に拘束してしまった。
「色素が薄くて申し分ないな。これは中々新鮮な肉だ」
医師の須藤もニンマリとしている。大陰唇の隙間から鮭紅色の秘肉が覗いている。弥穂の媚肉の鮮度を確認するように、男達はしげしげと顔を寄せる。
「さて、準備が整ったわね。次のゲームは、膣圧測定よ。ふふふ、まずはこのベースの部分を弥穂に加えてもらいまーす」
嬉々とした面持ちで麗奈は金属の分銅を弥穂の秘裂にめり込ませた。
「ひぃ、そんな急に……」
「あら、あなたいつでも濡らしてるのかと思ったら、今日はそうでもなかったのねぇ」
弥穂の性器は、恐怖のあまりキュっと閉じあわされ、潤いも十分ではなかった。それでも無理やり押し込まれて、胡椒瓶くらいの大きさの分銅はようやく弥穂の中に収まった。分銅は底の部分にフックが着いている。そのフックの部分だけが、不格好に身体の外に露出している状態だ。
「ここに、追加の重りが十個ありまーす。一つの重りが百グラムです。この重りが、何個目で落下するか、それを皆さんに当ててもらいまーす!一番近い数を言った人が勝利です」
「なるほど、奥さんのマン圧をネタに賭け事をしようというわけやな。これは恐れ入った!」
悪趣味そのもののプレイ内容に、鴻上が膝を打って喜んでいる。省三が、口を挟む。
「今度も弥穂に、チャンスを与えてくれんか?この十個、全て吊りあがったら、弥穂に全額やるということでどうか?」
「ふふ、いいでしょう。それでも奥さんが少しでも頑張るモチベーションになった方が、賭けるこっちも面白い。ベースの分銅の重みはだいたい五百グラムくらい。それに一つ百グラムの分銅が十個か。合計一・五キロ。なかなか耐えられる重さではないでしょうけどね」
須藤が冷静にいうと、鴻上と三島も安心したように頷く。
「それでは、皆さんそれぞれ個数の回答をお願いします」
鴻上が四つ、三島が五つ、そして須藤が六つという予想を立て、それぞれホワイトボードに記入した。
「では、どんどんいきますよー!」
麗奈が、一つ目の分銅をフックに引っかける。小さな分銅は弥穂の足の間で左右にスイングしている。弥穂は下腹部にグッと力を込めた。二つ目の分銅までは、余裕があったが、三つ目がぶら下げられた時、急に大きな引力を感じた。何とか踏みとどまったが、ベースの部分が、ほんの数ミリ、外に引き出されたような気がする。
四つ目の分銅に麗奈が手を伸ばしたとき、鴻上が待ったをかけた。
「ワシにやらせてくれ!」
四つと予想した鴻上は、これを逃せば負けが確定する。黙っていられず、自ら分銅を繋ぐ作業をやらせろと主張した。
「鴻上さん、構いませんが、アンフェアな真似はやめてくださいよ」
興奮気味の鴻上に省三が釘を刺す。
「分かってます。無理に引っ張ったりとかそんなことしたら失格で構いまへん」
真下にかがみこんだ鴻上も鼻息が、絹草を不快に揺らす。もったいぶったゆったりした手つきで分銅近づける。遅延行為をしながら、そのまま弥穂が力尽きるのを期待しているのだろう、浅はかな魂胆に、他の参加者は苛立ち始めた。極めてゆっくりとした動作で手を放すと、
「ああ、落ちろ、落ちてくれ、頼む、弥穂ちゃぁあん!」
と鴻上は叫んだ。だが、醜男の願いとは裏腹に、弥穂は鴻上が吊るした分銅も、見事に支えた。股の下の鴻上の醜悪な様子やその鼻息の不快感で、弥穂の身を強張らせたのだが、それが結果的に膣の食い締めを強くさせたようにも思えた。
落胆した様子で席に戻った鴻上と入れ替わりに、三島が潜り込んできた。無駄に腕を振り回しては弥穂を動揺させる。
「そろそろ限界でしょう、弥穂さん。なんせまだ五個も残ってるんだ。我慢せずに早く楽になった方が身のためですよ、さっきのお漏らしの時みたいにね、ふふ」
底意地の悪い三島の言い方を聞き入れまいと、弥穂は顔を横に向けている。ただただ股の間にぶら下がっている金属の重りを放すものかと下っ腹にがむしゃらに力を入れ、その瞬間を待っている。
三島は、焦らし責めの作戦に出た。分銅を引っ掛ける仕草をしながら、途中で止めてしまう。弥穂の集中力が切れる頃を見計らって、唐突に仕掛けてきた。
「う、うぅぅ……」
五つ目の分銅は、痛切に弥穂を追い込んだ。少しでも力を抜けば、そのまま重力に持っていかれそうになる。(まだ、半分だなんて……)とてもあと五つも持ちこたえられないそうにない。弱い気持ちがムクムクと立ちあがってしまう。ミシ、ミシと膣の襞を裏返しながらベース部分が滑り落ちる感覚に悩まされる。
だが、どうやら持ちこたえた弥穂を見て、三島が頭を抱えた。これで、またしても勝利の資格は須藤の元に渡った。あとは、須藤と弥穂の一騎討ち。つまり、残り五個の分銅の重みに弥穂のヴァギナが耐えた場合、賭け金の総額百五十万円が弥穂のものになる。一方、それが叶わなかった場合、弥穂の取り分は須藤の儲けの一割、つまり十万円に留まる、という計算だ。
弥穂にとって、百五十万円は簡単に諦められるものではなかった。それだけの大金があれば、筑摩夫妻や下村といった卑劣漢に頼らなくても、夫と二人でなんとかやっていけるではないか。(私、絶対、負けないわ、零士さん)
「おや、鴻上さんと三島さんはもうチャンス無しだね。一番近い者が勝利ということだったから、もう私の勝ちは決定だな。時間がもったいない。六つ目と七つ目は同時にやってしまってくれたまえ。どうせあと五つなんて耐えられるわけがないんだから」
須藤は、弥穂の勇気を削ぐように、不敵な笑みを浮かべて言う。須藤は、鴻上や三島とは違い、作業を麗奈に任せた。その代わり、弥穂の肉がどう崩壊するか、じっくり見てやろうと睨みつけるように視線を送っている。
「ああ、もう、ダメううううっ……」
二つ連結した状態で分銅が吊り下げられる。弥穂は、下腹部にありったけの力を込めた。大股をギュウッと擦り合わせるようにして、必死で食い占める。弥穂の秘部からぶら下がった合計七つの分銅が、振り子のように揺れながらも、やがてピタリと止まった。
「ははは、これはあっぱれだ。七つも持ちこたえるとは正直思わなかったよ。こうなったらもうお金なんてどうでもいいさ。奥さんの肉万力をとことん拝ませてもらおうじゃないか。ほら、下村君、頼むよ。残りの3つ同時にいってくれたまえ」
「ああ、三つ一度になんて、無理です」
「ははは、一つずつだろうが三つ同時だろうが、結局は一緒だろうが。奥さんが三つ持ち上げられなけりゃ私の勝ちなのだから」
「うぅぅ、でも……」
下村は、須藤の指示に従い三つ連ねた分銅を、用意して弥穂の股間の下に屈みこんだが、あっと驚いたように言う。
「しまったなぁ、弥穂がここまで頑張るとは想定していなかったですねぇ。これ、床に着いちゃいます」
「仕方がないわ、弥穂。そのまま中腰の姿勢になるまで、膝を伸ばしなさい」
「え、そんな……」
何しろ石のように下半身を強張らせることでどうにか重りの落下を防いでいる状況なのだ。和式便所を跨ぐような今の姿勢が、もっとも力が入りやすい。だが、中腰の姿勢になったとき、自分のヴァギナが重力に抗えるのか、自信が持てなかった。弥穂に舌打ちされ、仕方なく少しずつ膝を伸ばし、下半身を立ちあがらせる。後手に縛られているので、手で身体を支えることはもちろんできない。腿がプルプルと震えて中々進まない。
「もう、トロいわねぇ。下村君、ちょっと手伝ってあげてよ」
後方で麗奈が下村に指示する。弥穂は二人が意味有り気に目配せするのを気づいていない。
「さあ、弥穂。支えてやろうな」
後ろに回った下村の手が伸びてくる気配がする。肩を支えてくれるのかと思ったその瞬間、左右の内腿から腰を伝い、脇腹にかけてまでを鳥の羽のようなふわりとした感触が撫でた。
弥穂は、下半身の集中を切らすまいと固く目を閉じていた弥穂は何が起こっているのか分からず、「キャっ!」と短い悲鳴を上げて身を捩った。一瞬、姿勢のバランスが崩れ、下肢に漲っていた緊張も緩んでしまった。
「ああ、ああ、ダメ、そんな、ダメよっ!待って、止まってぇぇぇ!」
ズリ、ズリズリと、ベースの部分が膣の中を滑る。慌ててヴァギナに力を込めようにも、時すでに遅しであった。長く伸びた分銅の列が、床にジャラジャラという音を立てて落ちる。最後に、一際重いベースの分銅がゴトっという鈍い音と共に床を転がるのを、弥穂は瞬きもしないで見つめていた。
須藤が勝ち誇ったように胸のあたりでガッツポーズを取っている。鴻上や三島は、またも須藤に賭け金を持っていかれたことに不平を述べている。だが、そんな言葉も弥穂の耳をすり抜けていく。何しろ、目の前で、あっというまに百四十万円が溶けてしまったようなものなのだ。
弥穂は、ようやく状況を呑み込むと沸々と怒りの感情が込み上げてきた。下村に、妨害行為をされたのだ。女の身体を玩具にするような下劣な遊戯に耐えたというのに、これではあんまりではないか。首を後ろに捻り、下村を睨みつける。
「こんなやり方、卑怯よ!」
「ん?どうしたんだい?私はただ君の足や腰を支えてあげようとしただけだが?ねぇ、皆さん?」
男達は、ニヤニヤ笑みを浮かべながら頷いている。
「皆さんもそういっているぞ。負け惜しみの被害妄想はよしてくれたまえ」
「ウソよ、絶対にウソだわ。何か、変なもので私を、くすぐったじゃない!」
「ふふふ、下村さん、膣圧は女のプライドなの。ゆるマンだと思われたの、許せないはずよ。ねぇそうでしょ、弥穂?」
「……そんなことじゃ、ありません」
この連中は、全員グルで、弥穂が経済的に困窮している方が、都合がいい。はじめから難癖をつけて、結局は弥穂を勝たせないと決めていたに違いない。怒りが収まらず、眉間に皺を寄せ、瞳は下村を睨みつけている。
「おお、怖い怖い。そんなにプンプンすんなって。お前のマンコがよく締まることは俺がよーく知ってるんだからさ。誰もゆるマンだなんて思ってないって」
「……くっ、もう、知りません」
怒りに震える弥穂を尻目に、下村がホワイトボード上の弥穂の列に「△」を書き込んだ。
「ふん。何もそんなにプンプンしなくったっていいじゃないの。次のゲームは、弥穂にもきっと気にいるはずよ。それで機嫌を直しなさいよ。ねぇ下村君。あれ、持ってきて」