硬直した怒張を若妻の体内にめり込ませながら、下村はその新鮮な肉の、弾力に富んだ反発を愉しんだ。ごく控えめにしか湿り気を帯びていない女の肉は、まだ固く閉じあわされており、下村が腰を鎮める度、ミシ、ミシッと裂けるような感触がペニスに伝わる。弥穂は、それが痛みのせいなのか、あるいは屈辱のせいなのかわからないが、眉間に深い皺を刻んでいる。被虐美の色香をムンムンと放つ若妻を見下ろしながら、下村はゴクリと生唾を呑んだ。
(ついにやってやったぞ。零士、お前の嫁はこれから俺の魔羅でよがり泣くんだ。鷹藤の話じゃあ、随分感度がいいらしいからな。それにしても、俺は本当に冴えてるぜ)
***
下村は、意中の人妻を絡めとった自らの奸計の巧みさと幸運に、すっかり一人酔いしれている。高校時代の親友で、東京で美容師として成功した零士が、美人妻を連れてこの街に戻って以来、下村は嫉妬に狂っていた。弥穂に半ば一目ぼれしてしまったのだ。その小動物のような愛らしい容姿だけでなく、夫の零士に注ぐ潤んだ眼差しが、下村を大いに刺激した。決して夫以外には向けられることがないであろう視線。それが、下村を狂わせた。
高校時代、下村も零士も共に、学業成績優秀な生徒だった。下村は順当に有名私大であるk大学の経済学部に進むことになったが、一方零士は大学ではなく都内の美容学校の道に進むといい、周囲を驚かせた。親友だった二人は互いが選んだ道をリスペクトしていた。
大学でラグビー部に入った下村は部活三昧の生活で、授業には禄に出ないような有様だったが、k大の体育会は大手企業への強力なコネクションがあるため、就職の心配は全くない、そう聞かされていた。下村の人生が暗転したのは、大学三年のときだった。二年上の先輩らが、過去に女子大の生徒を酒の勢いで集団レイプした事件が明るみになったのだ。下村自身は全く関与していなかったが、k大ラグビー部の名は地に落ちた。イメージを気にする大手企業にはとことん敬遠された。普通であれば、メガバンクのどこかに入行していたはずだが、結局地元の信用金庫からしか内定が得られなかった。
「俺は所詮、一生地方都市止まりの人間なのさ」
自虐的に周囲に漏らすうちに、下村は生来の快活さを失い、次第に卑屈な世界観・人生観を持つようになった……。
東京で成功を収めた親友の、凱旋ともいえる帰郷はy信金で十年近くもの間くすぶっていた下村の屈折を取り返しのつかない次元にまでこじらせてしまった。零士への妬みと弥穂への劣情が複雑に折り重なった。園川夫婦に開業の相談を持ち掛けられて以来、夫婦の新生活に罠を仕掛けてやる、という想念に下村は憑りつかれた。
そんな下村が自分の妄想を実現するために協力を求めたのは、この街でマンションや商業ビルを賃貸経営している筑摩省三だった。元々地頭のいい下村は、信金での業務もそつなくこなしていた。同期に比べて明らかに有能だった彼は、業務は七割程度の力で済ませ、残りの時間を地元の有力者との個人的なコネクションの構築に当てることに余念がなかった。この街で有数の資産家である筑摩に、下村はとりわけよく可愛がられていた。下村のほうでも、筑摩のことを「おじき」と呼んで慕っていた。
稀にみる好色家である筑摩は、何人もの愛人を抱えていた。いや、愛人というより、専属の性欲処理奴隷、というべきだろうか。下村は融資の面で何かと筑摩に便宜を図ることで、そうした愛人のうちの何人かとプレイをすることを許されていた。弥穂を見初めて以来、奸計によって若妻を篭絡することばかりを夢想していた下村は、いよいよその計画を筑摩に明かした。
「おじき、こいつら夫婦の出すサロン、何とかおじきの物件に押し込みたいんです。保証金の規定だけ、理不尽な内容にするかわりに、月の家賃は思いっきり下げていただけないですか」
元来、若者の街だ。美容室の需要は確かに高かったが、それでも駅前にはすでに店舗が乱立していて過当競争気味だった。東京で成功した零士の店といえども、成功が保証されているわけではない。いずれ夫婦が資金繰りに窮することだってあり得る。その時に、牙をむけばよい。それが下村の算段だった。
「おいおい、ずいぶん勝手な奴だな。だが、もしサロンが成功したらどうなるんだ。私の家賃収入が減るだけだ、違うか?」
「……もし、そうなれば、ヤクザでも使って店の妨害でもなんでもしますよ、俺の責任でね。だからおじき、何とか俺にチャンスをください。この通りだ」
下村は園川夫妻と筑摩を引き合わせた。筑摩自身が弥穂を大いに気に入った。店舗だけでなく、夫婦の新居も、筑摩の物件を格安で貸し出すことになった。筑摩は、下村の妄執に、賭けてみることにしたのだ。
賭けは、あっけなく筑摩・下村の勝利に終わった。下村が手を汚すまでもなく、新型ウィルスが日本を襲ったのだ。しかも、夫婦の店が軌道に乗る前に。早晩園川夫婦が金詰りに陥ることは火を見るよりも明らかだった。下村は、急ピッチで凌辱までのプロットを描き、筑摩と共にそれを推敲していった。
転落の第一歩として、まずは零士に脆い金をつかませる必要があった。下村は、信金の店舗の警備員で、喫煙スペースで親しくなった佐竹に声をかけ、偽の街金業者に仕立て上げた。
「なに、金貸しといったって、一度この店にいって契約書の説明をするだけだ。俺が台本を書いてやるからとにかく契約書を置いてこい。な、悪い商売じゃないだろ?ものの一時間で終わる仕事で五万円ももらえるんだぞ」
慢性的な浪費家で金に困っていた佐竹は、下村の申し出を断るはずがなかった。
金を貸し付けた後は、強引な取り立てで、夫婦を追い込む段階だ。
「債権をヤクザかに転売して、脅させるのはどうですか?」
「ああ、悪くないな。だが、下手したらヤクザに女ごと持っていかれるぞ。本物のヤクザよりは、ヤクザ崩れの闇金に取り立てをさせるのがいいだろう」
「零士のやつが邪魔です。まずはあいつを拉致させますか?」
「そういきなり大きくでるな。物事には順序ってものがあるだろ。この手の悪行は、プロに任せるのが一番だ。この男を訪ねてみろ。女のこましかたも一流だし、何より現役のヤクザは裏についていない。まだ扱いやすいほうだろう」
筑摩は、鷹藤の名刺を下村に手渡した。かくして、下村、筑摩、鷹藤という三人の鬼畜が繋がった。「貧困ビジネス」界隈とのコネの深い鷹藤が、特殊清掃の業者への人身売買の案をもってきた時、三人はこの計画の成功を確信した。どちらかというと控えめで大人しそうな弥穂のことだ。夫と引き離してしまえば手懐けることは容易であるように思えた……。
***
とうとうペニスが根元まで弥穂の性器に埋め込まれ、切先は秘奥に到達した。達成感と全能感のあまり、下村は邪悪な笑みがこらえきれなくなっていた。
狡猾な自らの本性をその表情から気取られまいと、下村は顔を弥穂の横にそっと寄せた。
「素晴らしいよ、弥穂さん」
「零士よりも早く弥穂さんに出会っていたら、俺の人生も違っていたかもなぁ」
などと耳元に吹き込みながら、弥穂の頭頂部を優しく撫でさする。なおも弥穂は視線をあさっての方向へ逸らしたまま、下村の懐柔を拒んでいる。肉棒の抜き差しにも懸命に反応を抑えているように見える。
下村は弥穂の頬をビンタして屈服させたい、という衝動に駆られたが、すんでのところで踏みとどまった。(まずいまずい。今日くらいはジェントルマンでいないとな)
下村は、鷹藤から、サロンでの凌辱劇を収めた動画を入手していた。暴力と、脅しと、色責めに翻弄され狂わされる弥穂の様子に、心の底から魅了されていた。
下村は、鷹藤からその動画を五十万円で買い取らされていた。若妻を弄ぶチャンスを与えてやったのに、図々しくも金をせびってくる鷹藤に、下村は憤った。そもそも、下村は鷹藤にセックスする際は避妊するように言っていたのだが、約束を反故にされたことを知って激昂した。
「散々いい思いしておいて、金までとる気かよ。しかも、三人がかりで、全員中出ししただと?ふざけんじゃねぇぞ!」
噛みついてきた下村だったが、すかさずそのみぞおちに、鷹藤がボディブローを繰り出した。グフっ、という呻き声とともに、下村は腹を抱えて身体を屈めた。間髪入れずに鷹藤の張り手が下村の右頬を痛烈に捉えた。
「おい、若造。調子に乗るんじゃねぇぞ。俺らがいなかったら臆病者のお前のような奴があの上玉とハメハメできると思うか?この動画はなにもお前のセンズリのためにあるんじゃねぇ。いざとなったらこれであの女を脅すのにも使えるんだ。そう考えりゃ五十万なんざ高くねぇだろう、ああ?」
その後、痛む腹を抑えながらも動画の内容を確認した下村は、そのあまりの凄艶さにすっかり心を奪われていた。殴られ、大金をせびられたこともすっかり忘れてしまうほどだった。いずれ自分もサディズムを全開にして、弥穂をとことんまで嬲ってやる、そう決心していた。
だが、一度狼の顔を見せてしまえば、そこからはサドマゾの関係にしかなりえない。今日はまだ辛うじて弥穂と親密で甘い関係を愉しめる余地があるはずだ。強姦し、凌辱することは、これからはいつでもできるではないか。
(今は鬼畜キャラは休業にして、プレイボーイに徹するぞ)
暴力や脅しではなく、口説きと愛撫で弥穂を攻略してやる。下村はそう誓った。