恥獄パンデミック 若妻美容師 弥穂の場合 > 第1章 新生活、最初の躓き
[あらすじ]
人妻で美容師の弥穂は、夫の零士とともに小さなヘアサロンを開業する。だが時を同じくして、新型ウィルスの伝染病が日本で猛威をふるっていた。

客足は遠のき、ついにはロックダウンで街はゴーストタウン状態に。
ウイルスの全世界的な拡大を前に、夫婦の蓄えはみるみる枯渇していく。
友人で、地元の信用金庫に勤める下村にだまされ、零士は筋の悪い金を掴まされる。やがてヤクザまがいの借金取りが現れ、零士は強引に危険なウイルスの"除染現場”へと連行されてしまった。

最愛の夫と引き裂かれた弥穂。零士が過労によって倒れたことで、「返済の代わりに」と、弥穂は借金取りたちによって身体を弄ばれ、犯されてしまった……。

縋るような思いで下村に助けを求める弥穂。だが、卑劣漢の本性を現したその男の手で、決して引き返せない、性の奈落へと引きずりこまれていった…… 。

2026.01.23 永井 亮
凌辱、NTR
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弥穂が夫と共に、横浜市にあるこの街に引っ越してきたのは、昨年の年末であった。夫の零士が生まれ育ったこの街で、夫婦は自分たちの美容室を開業することになっていた。
弥穂が零士に出会ったのは、三年前。当時は、二人とも、表参道の有名サロンで勤務していた。零士は、口数の少ない、職人肌の美容師だったが、類まれなタッチと独創的なアイデアが評判になり、たちまち業界にその名を轟かせていた。
まだ新人であった弥穂は、世間が見出す前から、零士の才能に魅了されていた。閉店後の店内で、弥穂は教育係であった零士に師事して、毎晩遅くまで指導を受けていた。二人きりで過ごす時間が長くなるにつれ、若い男女が惹かれあうのは、自然な成り行きであった。二年間の交際を経て、零士が三十歳、弥穂が二十六歳になるその年の暮れ、二人は入籍した。カリスマ美容師の零士と、二十六歳にしてなお可憐な少女のような透明感の持ち主である弥穂。二人の結婚は、羨望の的だった。
結婚と共に、二人は店を退職した。売れっ子だった零士は、店の顔だったので、激しい引き留めにあった。だが浮き沈みの激しい世界であくせくするよりも、自分だけの小さな店で理想を追求したい、それが零士の希望だった。弥穂は、全面的にそれを支えた。
二人は店の名前を、『サロン・ド・レイ』と称した。デザイナーズマンションの一階部分に設けられた店舗は、客席五台程度で、ごく小さなものだ。二人が創業の地として選んだこの街は、有名私大であるK大学が位置していることもあって、若者が多く集まり、活気に満ちていた。新年が明けるとともに、園川夫妻は店の内装や配管の工事、受付のアルバイトの面接、近隣店舗への挨拶(とともにチラシ配りも)などを慌ただしくこなした。いよいよ開業を予定していたその年の一月末が近づいていた。
だがその頃、園川夫妻を、いや世界を不吉なニュースが覆った。海外で猛威を振るう新型ウィルスが、ついに日本でも蔓延を始めたのだ。連日、感染者数や死者数のニュースが世間を騒がせていた。
不安な日々を送る夫婦にとって決定的な不幸が降りかかってきたのは、店のオープン二日前だった。K大学の医学部付属病院で、院内での集団感染が発生したことが報じられたのだ。学生の中でも、感染が蔓延し、付近の飲食店がクラスター発生源となっているという。当然、大学は一斉休校となり、付近の飲食店もほとんどが臨時閉店となってしまった。あれほど賑やかだった学生街は、ほとんどゴーストタウンのように、静まり返った。
『サロン・ド・レイ』はそのような最悪な状況下で門出を迎えた。初日こそ、表参道時代からのなじみ客が何人か訪ねてくれたが、二日目、三日目となると完全に客足が途絶えた。こうも近隣の店舗がシャッターを下ろしていると、店を開けていること自体にやましささえ覚えてしまう。
「私たち、大丈夫かしら……」
弥穂が不安げに呟く。
「なに、そういつまでも続くことはないさ」
零士は腕が鈍ってしまってはいけないと、マネキン人形の髪を切りながら、自分自身にも言い聞かせるように答えた。
だが、夫妻の祈りも虚しく、感染の猛威は勢いを増すばかりだった。一日の感染者が千人単位で増えていくのを見るにつけ、早期の収束が絶望的であることは明らかであった。もはやこの国の誰一人としてヘアスタイルのことなど気にしていないのではないか、そんな暗い考えが、弥穂の心に暗い影を落とした。

「真仁、なんとかならないのか?このままだと、本当にまずいんだ、頼むから何とか言って
くれよ、なあ!」
零士が電話口で苛立ちまぎれに声を荒げている。電話の相手は零士の幼馴染で、下村真仁
といった。
地元の信用金庫、Y信金に勤めているこの青年は、園川夫婦の起業を全面的にバックアップした。開業にあたっての工事費や運転資金見合いの融資の手配だけでなく、地元の不動産屋との橋渡し、物件の選定にも積極的に相談に乗ってくれていたのだ。夫婦の選んだこの物件も、下村が見つけて来てくれたものだった。
だが、その家主の希望する契約条件は非常に特殊なものだった。家賃は破格の安さで、相場の六割くらいの水準だったが、その代わり敷金は五百万円と高額で、しかも家賃延滞が発生した場合には、1か月で半額を、2か月で全額を召し上げられた上で退去させられる、というものだった。下村は従前からリスクについて忠告してくれていたが、店の成功を信じて疑わない零士は気にも留めなかった。それがいまや、この条項が夫婦の未来を暗転させた。
「ああ、わかってるよ。俺が決めたことだし、お前を責めてるわけじゃないんだ。だから、今から追加で融資をお願いできないのかって聞いてるんだよ」
 下村の回答は、ノーだった。夫婦には事業の実績というものが皆無だ。ウィルスの蔓延前ならともかく、こうなってからでは、融資をしてくれる銀行や信金はいない、それが下村の見解だった。
ほとんど売上が見込めない状況下、月々の家賃支払は着実に夫婦の蓄えを蝕んでいった。
このまま家賃が支払えなくなってしまえば、店を追い出されたうえに貯金を全て失うことになる。設備・備品の調達は、信金から借りている。それらを中古品として売却したとしても、この状況下だ、二束三文でしか買い手はつかないだろう。「全財産を失って、借金だけが残る」そうした暗い予感が、刻々と現実味を帯びてくる。
「力になれなくて、すまない。うちから融資することはできないが、その代わり、短期の資金を貸してくれるところなら、紹介できる……けど、なぁ零士、これはある意味博打だぞ。この病気が、いつ収まるのかなんて、誰にも分からないんだから」
 下村は、即決で融資をしてくれる街金業者を紹介すると言った。利息は、まともな金融機関に比べればかなり高いが、それでも感染が収まってすぐに店が軌道に乗りさえすれば返せないほどではない。とにかく、敷金を没収される恐怖から逃れたい一心で、零士は下村の提案を呑んだ。それが、夫婦の本格的な転落の始まりだった……。

 
二日後、下村が紹介するといった貸金業者が一人店を訪ねてきた。
「ロケットファイナンスの佐竹です」
と名乗ったその男は、たどたどしく契約条件を早口で読み上げると、すぐに付箋を貼った契約書のページに署名を求めてきた。その様子が、あまりに性急なので、不安になった夫婦は丁寧な説明を求めた。男は困惑した様子で、
「内容は下村さんから大方説明を受けていると思ったんですがねぇ。まあいいでしょう。下村さんにも一緒に読んでもらって、よく考えてから決めればいい。書類は書留でここの住所に返送してくれたらいいので。じゃあ私、次のアポがあるので、これで失礼」
と言って、そそくさと去っていった。

「ああ、このところ、短期の融資の引合いが多いから、余程忙しかったんだろうな。まあ契約内容は問題なさそうだから、大丈夫だと思うよ」
後日下村にも目を通してもらい、契約書に問題がないことの確認が取れると、漸く安心して零士はサインをした。何しろ高校を出てすぐ美容学校に進み、それからずっと美容の世界で働いてきたのだ、難しい金融関係の契約書など、さっぱり理解できない。専門家である下村の判断に、零士は全面的に依存していた。
「だけど零士、これはあくまで短期資金だ。長く借りていい相手じゃない。言いづらいけど、諦めも大事だぞ」
「分かってるよ。とにかくありがとう。助かったよ」
サイン済の契約書を投函してから二日後、零士の口座に早速二百万円が振り込まれた。

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