[あらすじ]
私の名前は、摩耶。総合商社でOLをしている、二十五歳。 悪質なセクハラに悩んでいたけど、勇気を出して告発した。加害者の上司は、すぐに左遷された。それから私は、大好きな先輩社員と交際中。仕事も恋愛も全てが順調だった。
ある日、人事部から「女子社員向けに、セクハラに関する座談会を開くので、出席してほしい。新入社員研修の一環だから」と言われた。 泣き寝入りする女性がいなくなってほしい。そんな純粋な気持ちで、私は首を縦に振った。

…だけどそれは、巧妙に仕組まれた罠だった。 その先に、自分の恋愛観までも破壊してしまう、淫らな運命が待ち受けているなんて……

2026.01.19 永井 亮
女性一人称、ラブストーリー
読者タグ: なし

添田さんは、すぐに中に入ってきてくれた。いつもみたいに、丁寧な前戯もじれったくて、私が急かしたから。私の身体は、添田さんを貪った。入ってきた、その瞬間から、電流が駆け抜けた。
 添田さんのいない間の一か月。散々弄ばれた私の身体。今まで、添田さんとのセックスでは、きっと自分の衝動を、押さえつけていたんだと気づいた。でも、今日はそれじゃダメだ。添田さんこそが、私を一番高いところに連れて行ってくれるって、証明したかった。  
身体の中を駆け抜ける刺激が、自分を燃え上がらせるのを、自分で助けたくて、腰を揺すった。
「摩耶、なんか今日、すごいんだけど。どうしちゃったの」
「だって、だって……一か月も、添田さんに放っておかれたんだから!」
 そういうと、添田さんがそっと頭を撫でてくれた。きっとそうしてくれると思って言ったから、すごくうれしかった。心が、通じたと思った。私の内側が添田さんを固く握りしめるのを感じた。 
ひとしきり、添田さんの温もりを感じてから、私は言った。
「添田さん……今日は、優しくしないで。私のこと、嬲ってほしい」
「えっ……」
 嬲る、なんて言葉が私の口から飛び出したので、驚いたみたいだ。
「罰が、ほしいんです」
「どうして?」
「私が、悪い子だから」
 添田さんは、それ以上聞かなかった。代わりに、腰の動きを、段々と乱暴にしていった。きっと、私の言葉の裏を怪しむようなことはなかったと思うし、何かのプレイだと思ったんだと思う。それに、添田さん自身が、ものすごく興奮しているみたいで、深く考えている余裕は感じられなかった。そのことが、ありがたかった。
 西條君との関係を経て、自分の身体が、乱暴なプレイに順応してしまっている。そのことを自覚していた。
添田さん特有の、優しくて、包み込むようなセックス。ゆっくりと満たされていくようなセックスが、大好きだった。
でも、今日はそれじゃダメ。クローゼットの中で息を潜めてみているカレに、私が激しく、我を忘れたみたいに上りつめるところ。それを見せつけてやりたい。
添田さんを、欺いている。その後ろめたさも、ないわけではなかった。けれど、それもすぐに掻き消えていった。だって、添田さん自身も、そういう関係性に、明らかに興奮しているみたいだったから。
「こういうの、どうかな」
 カレが、私の両ひざの裏を荒っぽく掴んで、自分の肩の上に乗せた。
「ああっ!怖いっ、でも、欲しいです。乱暴に、ぶつけてほしい……」
 西條君に研修室の隅で犯された、あのときを思い出さないわけにはいかなかった。添田さんも、西條君も、体型は細くて、骨ばったところがある。私の膝裏の柔らかい肉に食い込む、男性の肩の骨の、あの硬い感触。立位と屈曲位で、体勢は全然違うけれど、身体の中に感じるソレの角度や深度は、すごくよく似ていた。

犯される、犯されたいっていう言葉が頭の中で繰返し反響した。その先に、オーガスムスの気配を感じた。
「じゃあ、思いきり、突くから、いいね?」
 私は、頷いた。部屋は照明を落としていたけども、もう目が慣れていた。私の両脚に挟まれた添田さんの顔が、いつになく獣じみているのがはっきり見てとれた。
 大きなハンマーで、杭を打ち込まれる地面のように、自分の内側がひび割れるような気がした。打ち込まれた杭が、地中の圧力か何かに影響を与えて、そこから地下水が湧きだしてくる。そんな映像が、瞼の裏に浮かんだ。私は、身体の奥の方から湿りきっていたし、おまけに涙まででてきた。
「どうした?痛かった?」
 いつもの添田さんに、撫でてもらったり、優しくしてもらったりしたい。でも、そういうやりかたじゃあ飛べないのが分かっていた。飛び立たないかぎり、クローゼットの中で息を潜めているカレを納得させられない。
「違うの、全然、痛くなんてない。私、嬉しいの。添田さんに、もっと、お仕置きしてもらいたい。だから、やめないで……。突くの、やめないで、私が、どんなに泣いても!もうやめてって叫んでも!」
 そこから、添田さんはもう止まらなかった。何度も何度も、私を滅多刺しにしてくれた。遠のく意識の中で、クローゼットの扉の、その隙間に視線を向けた。ベッドの奥の大きな窓の、そのカーテンの隙間から差し込んでくる街灯の光が、妙にそのあたりを明るく照らしていた。扉の隙間から、ぎらついた目が見開かれているのが見えた気がした。
 
私、今から離陸するから
キミはそうして、地上から、見あげていればいい

 私は、心の中でそう言い終えると、次の瞬間には、添田さんの身体にしがみついて、宙に舞った。 

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