カレは、すぐに挿入を求めてくるのだと思った。だって、痛々しいほど男性の部分が反り返っていたし、ものすごく息が荒かった。でも、そうはならなかった。カレは、私の左足からパンプスを脱がせて、足の指に口を押し当ててきた。
「何をしてるの!やめて、そんなこと、しないで!」
「俺、何でもできます。摩耶さんにだったら」
親指と人差し指の部分に前歯を立てて、そこに小さな穴を空けた。穴の空いた部分を器用に咥えて、噛みちぎるように、パンストの生地を裂いていった。
「だ、ダメだってば!これ以上は……う、むぅぅぅん」
裂けた部分から、足裏や足指同士の間に、唾液をまぶしながら、まるで丁寧にコーティングを施していくみたいに、舌での愛撫が始まった。
奉仕、って言葉が頭に浮かんだ。強引に、押し倒されて、乱暴されている立場のはずなのに。舐められてる、じゃなくて、舐めてくれている、って。私の意識は、そんな風に状況を認識している。そのことにハッと気が付いて、混乱しながらも、何か懐かしい気分になった。
……そうだった。添田さんも、初めての夜。こうして、足を舐めてくれたんだった。処女で、怯えていた私。身体の痛みだけじゃなくて、うまく添田さんを満足させられなかったらどうしようっていう不安。添田さんは、言葉にはしなかったけど、舌で私の身体を隅々まで労わりながら、何があっても大丈夫だよって、そう言ってくれているように感じた。この状況(たくさんの男の子達に見物されている)なのに、私の意識は、ロストバージンのときの、甘い思い出の中を漂っていた。
でも。今私の下半身を舐めまわしているのは、添田さんじゃない。性的興奮に駆られた、血の気の多い、若い男子だ。私と特別な関係になる必然性なんて、何もない。それなのに、まるで動物実験の犬みたいに、よく似た刺激を与えられて、反応して、そのせいで易々と身体を許すなんて、あんまりに惨めだ。
パンストの内腿部分を勢いよく嚙みちぎりながら、西條君の唇が股の付け根にまで迫ってきたとき、力を振り絞って、その頭を押しのけた。この狂った部屋から、脱出するしかない。こんな形で、心も身体も奪われるわけにはいかない。私は、立ち上がった。
でも。研修会場の出口までの空間は、無数の男子社員達に塞がれていた。
「ど、どいて。私、もう帰るから」
「研修を途中ですっぽかすなんて、無責任なことは辞めたまえ、摩耶君」
「何が、何が研修よ、こんなのただの……れ、レイプじゃない」
「ふふふ、でもここにいるみんなが証人になるんだけど。笠谷さん、あなたがマン汁たっぷり滴らせて、この西條君を誘惑しましたって」
「……人事部に、告発します!あなたたち全員が、グルになって私を……」
すると、男の子達が一斉に、スマホの画面を突き出してきた。つい数秒前に、西條君の舌奉仕を受けている私をいろんな角度から捕らえた動画が、一斉に再生された。上気した頬や、焦点の定まらない視線。えっ?これが、私、なの?
そして、最悪の証拠は、私の指先にあった。西條君の右手を握りしめている、私の左手。まるで、恋人同士のように絡まり合った指と指が、ズームアップされていた。添田さんに対する裏切りを糾弾されているように感じた。
「ふふふ、素晴らしいわぁ。男女の深―い交わりを学べる、とっても意義深い研修だったんだろうなって、これ見た人は思うでしょうね」
「ああ、こんなことが、許されるはずが……」
「そうよねぇ、許されないわよねぇ。添田君、あなたのこと許してくれないだろうなぁ。こんなアへ顔、大勢の前で晒したあなたのこと」
私は、耳を塞いで立ち尽くした。出口は、もうどこにもなかった。
[あらすじ]
私の名前は、摩耶。総合商社でOLをしている、二十五歳。 悪質なセクハラに悩んでいたけど、勇気を出して告発した。加害者の上司は、すぐに左遷された。それから私は、大好きな先輩社員と交際中。仕事も恋愛も全てが順調だった。
ある日、人事部から「女子社員向けに、セクハラに関する座談会を開くので、出席してほしい。新入社員研修の一環だから」と言われた。 泣き寝入りする女性がいなくなってほしい。そんな純粋な気持ちで、私は首を縦に振った。
…だけどそれは、巧妙に仕組まれた罠だった。 その先に、自分の恋愛観までも破壊してしまう、淫らな運命が待ち受けているなんて……
私の名前は、摩耶。総合商社でOLをしている、二十五歳。 悪質なセクハラに悩んでいたけど、勇気を出して告発した。加害者の上司は、すぐに左遷された。それから私は、大好きな先輩社員と交際中。仕事も恋愛も全てが順調だった。
ある日、人事部から「女子社員向けに、セクハラに関する座談会を開くので、出席してほしい。新入社員研修の一環だから」と言われた。 泣き寝入りする女性がいなくなってほしい。そんな純粋な気持ちで、私は首を縦に振った。
…だけどそれは、巧妙に仕組まれた罠だった。 その先に、自分の恋愛観までも破壊してしまう、淫らな運命が待ち受けているなんて……
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