[あらすじ]
私の名前は、笠谷摩耶。派遣社員。派遣先の会社は例の新型ウィルス感染爆発の影響で全館閉鎖。契約の都合で、在宅勤務も認められず、一時休業状態に。ひそかに好意を寄せる男性社員から、自宅で仕事を手伝ってほしい、と言われてから、私の人生は大きく変わってしまった。

凌辱専業作家が描く、女性一人称作品。「拗らせ女子」が語る、甘く、切なく、狂おしい奈落。

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2026.01.11 永井 亮
女性一人称、ハード、処女、拗らせ
読者タグ: なし

目覚めると、ホテルの部屋の、ソファの上に横たわっていた。集団レイプの現場から解放されて、社有車に乗せられた辺りから、記憶が曖昧だ。たしか、ホテルについて、それから、鈴原にシャワー室に連れられて、身体を清められたような気がするけれど、それが夢の中でのことだったのか、現実だったのか、はっきり思い出せない。だけど、自分の肌から、いかにも外国っぽいボディーソープの強い香りがしているから、きっと現実だったんだろう。着るものは、何も纏っていなくて、身体の上には大きくて分厚いバスタオルがかかっているだけ。時の針は、午前二時半を指していた。
「ああ、摩耶、起きたか」
 バスローブ姿の染谷の声が、後ろから聞こえてくる。馴れ馴れしく呼びすてにされて、腹が立つ。ほんの少し眠っただけだが、腹を立てることができるくらいの気力は回復しているみたいだ。
「ねぇ、見てよ、すっごい面白いことになってるみたい」
 どこからか戻ってきた鈴原が、いつになく軽快な様子で言う。テレビの電源がオンにされ、鈴原の手の中のスマートフォンとWi-Fiで接続された。

 画面は、薄暗く、不鮮明だったけど、ホテルの居室を隠し撮りしたカメラのようだ
壁にかかった抽象画の絵画の感じや、調度品のデザインがよく似ているから、おそらくこのホテルのどこか別室だと思う。
 よく目を凝らすと、ベッドの上で、辛そうにお腹を押さえながら眠っているワイシャツ姿の男性がいる。それは、あの人だった。
「どこですか、彼は、今、どこにいるんですか!」
 私は、鈴原を食らいつくように問い詰めたが、答えは帰ってこない。ただ、よく見ていろ、というように画面の方へ顎をしゃくるだけ。私の視線は再び液晶の方へ向けられた。  
次の瞬間、私は凍り付いた。添田さんのいる部屋の扉が開けられ、廊下の灯りが差し込む。光を背にして、現れたのは、バニーガールの衣装をした少女だった。顔の作りや表情は分からなかったけれど、その身体の完璧なシルエットからして、私は一目でそれが優奈ちゃんだと分かった。
扉が閉まって、部屋の中の明かりは、ボリュームを押さえて灯されたフットライトだけになった。カメラの露光調整が一瞬遅れて機能する。薄暗い画面は、解像度が荒くなる代わりに、細部まで見渡すことができるようになった。
暗闇の中から浮かび上がる少女が纏っているその衣装…。最初、バニーガールのそれだと思った。だけど、実際にはバニーガールらしいは頭の上に乗っかったウサギの耳の部分だけだった。
ロングスリーブの女性用タキシードを模した、テカテカしたナイロン素材のスーツ。その首元、蝶ネクタイの部分よりの布地は全て切断されているから、左右のおっぱいは剥き出しになっている。下半身にいたっては、目の粗い網タイツの他は、何も肌を覆っていない。一切、なにも。
浅ましくて、いやらしい姿の優奈ちゃんが、ゆっくりした足取りで、添田さんのすぐそばまで迫っていく。心の中では、絶叫していた。だけど、声が出ない。瞬きもしないで、私の両方の眼球は画面に吸い込まれそうになっているし、身体は硬直して、両手の指は身体を包んだバスタオルを握り締めている。金縛り。経験したことがなかったけど、もしあるとしたらこんな感じなんだろうか。
「ふふ、分かる?今これ、賭けをやっているんだって」
「賭けって…、一体何を」
「添田君か、優奈か。どっちかが金持ちの変態趣味の生贄になるっていう話」
 頭の中がぐちゃぐちゃになって、心拍数が、高まる。言われている意味は分からないけど、悪い予感だけ、胸騒ぎだけが胸の中を引っ掻きまわしている。
 どういうことですか、それは。という言葉が、喉から出かかっているけれど、言葉にならない。聞きたくなかった。最悪な企みだってことだけは、明らかだったから。だけど、聞かれてもないのに鈴原が続けた。
「なんかね、優奈が逆さ吊りになって鞭で打たれているのを添田君、見かねて止めにはいったらしいのね。当然、富豪連中のSPに取り押さえられちゃって、ボコボコよ」
「ああ、なんてこと…」
「ところが、その富豪たち、添田君の身体にまで興味持っちゃったみたいなの」
「そんな、そんな…」
「それで、そいつらの要求はねぇ。密室で優奈に添田君を誘惑させて、彼がそれに引っかかっちゃったら、添田君を一日嬲らせろ、っていうのよ」
 なんでこんなにも、惨いことを考え付くのだろう。添田さんは、正しいことをしただけなのに。どうして…
「もし、彼が、添田さんが、引っかからなかったら、どうなるんですか」
「そのときは優奈が数日そいつらの物になるんだって。社長が傍にいると思いきりプレイできないからって、離島の別荘に連れていかれるみたいよ。だから、優奈だけ帰国は遅れるわね。社長も初めは難色を示したみたいだけど、元はと言えば接待するこちら側の粗相でしょう。最終的には断れなかったみたい」
 ショックで、言葉が出てこない。添田さんか、優奈ちゃん。どちらかが、生贄になって、ひどい目に合わされる。そのことが決定する瞬間を、私は、ただ見ているしかない。
 画面の中の優奈ちゃんはもう、添田さんのベッドのうえに身を預けていた。彼の背中や、腕、腿を優しく愛撫している。そうして、どれくらい時間が経ったのだろう。彼は優奈ちゃんの存在に気づいて、跳ね起きた。隠しカメラは、音はうまく拾えないようで、二人の間で交わされる言葉は分からない。何か一言二言口を開いたあと、優奈ちゃんの手が、添田さんのベルトの方へ伸びて、それを解いた。私の喉は、あぁ、あぁとただ情けない声を漏らしている。
「ふふふ、添田君、断らないわねぇ。あ、あれぇ!いやだぁ、見てよ、彼のアソコ。しっかりテント張ってるじゃなぁい」
「あの人が添田さん、でしたっけ?カッコつけてても、やっぱり優奈のことエロい目で見てたんだな。ほら、摩耶が半泣きになってるじゃないですか。可哀そうに」
 染谷が、背後から私を抱き寄せて腿やお腹のあたりに手を這わせてきた。傷ついた私を、弄ぶつもりだ。その手には、乗るもんか。
「でもまだ分からないわよ。賭けの勝敗は、添田君のおチンチンが優奈の中に入ったところで決まるらしいから。ねぇ、摩耶、勃起したくらいは浮気に入らないわよね?」
「も、もう、黙ってください!いいかげんに…」
「ははは!怒った怒った。染谷君、見たでしょ?女の嫉妬って、怖いのよ、ほんとに」
 優奈ちゃんの細くて白い手が、彼のボクサーブリーフのゴムの部分にかかる。ブルんと彼の固くなったそれが、弓なりに弾みながら飛び出す。その様子を、鈴原が大袈裟に囃し立てるけれど、その声もどこか遠くで聞こえるようだ。声も立てずに、ただ生暖かい涙が頬を伝う。
「落ち込むなって、摩耶。代わりに俺がお前のこと可愛がってあげるからさ」
 染谷の両手が、私の乳房を柔らかいタッチで揉みこんできた。乳首にほんの少し触れるかところで手の平を円を描くように動かす。いつか、添田さんもこんな風に私を愛してくれた。身体がそれを覚えているからか、私の乳首は、抗う術もなく、起き上がった。少しずつ、染谷に対する拒否感が、薄らいでいるのを自覚する。
「いいんだよ、摩耶。彼だってこれから優奈と楽しむんだ、いいんだよ、お前だって、楽しめば」
「ふふふ、でも、添田君が楽しめるのは一瞬だけよ。挿入した瞬間、SPが部屋に乗り込んできて取り押さえることになってるらしいから。くくくっく、その時の彼の顔、早くみたいわぁ」
私が何度も愛した、添田さんのペニス。私を女にしてくれた、彼のおチンチン。それを、優奈ちゃんの手が握りしめている。彼女がそのまま、彼の上に腰を落としていく。ゆっくりと、着実に、破滅の瞬間が迫っているけれど、もう、どうでもよくなってきた。最後まで信じて、裏切られるのは、耐えられない。これ以上、傷つきたくなかった。もう、染谷の愛撫に身を委ねて、快感に身を委ねるだけの人形に墜ちてしまいたかった。
 だけど、最後の、最悪の瞬間は、結局訪れなかった。
 画面の中の、二つの性器が交わる、その瞬間。添田さんの両手が、優奈ちゃんの肩を、突飛ばした。彼が何か言葉を発したあと、彼女は、ベッドの上でしばらく小刻みに震えていた。恐怖に震えているんだ。ようやく立ち上がって、ふらつく足取りで、廊下の方へと向かう彼女の半裸の後ろ姿が光の中に消えていく。その光景を、私は一生忘れることができなかった。

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