[あらすじ]
私の名前は、笠谷摩耶。派遣社員。派遣先の会社は例の新型ウィルス感染爆発の影響で全館閉鎖。契約の都合で、在宅勤務も認められず、一時休業状態に。ひそかに好意を寄せる男性社員から、自宅で仕事を手伝ってほしい、と言われてから、私の人生は大きく変わってしまった。

凌辱専業作家が描く、女性一人称作品。「拗らせ女子」が語る、甘く、切なく、狂おしい奈落。

2026.01.11 永井 亮
女性一人称、ハード、処女、拗らせ
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結局、私は無意味なスキャンとシュレッダー作業を終わらせるのに、午前中一杯を費やすハメになった。その間、他の社員達は声をかけてくれるでもなく、チラチラと好奇心剥き出しの視線を送ってくるだけだった。(といっても、何でそんな恰好してるの、などと尋ねられるのは最も避けたかったから、ホッとしているのも事実だった)

席に戻ると、ちょうど昼休みの時間だ。いつもなら、お弁当をつくって持ってきているが、今朝は早出を求められていたし、そんな気になどとてもなれなかった。そもそも、この状況で、食事など喉を通るはずがない。どこか、人目につかない場所、あまり社員の出社していないフロアのトイレかどこかで身を隠していよう。そう思った矢先だった。
「あのさぁ、笠谷さん、お昼ご飯なんだけど、一階のイタリアンでパスタかなんかテイクアウトで買ってきてくれる?」
「あ、先輩、いいなぁ!じゃ、私も頼んじゃお。でも私は中華がいいなぁ。ほら、これ、お願いね?」
この二人の使い走りまでさせられないといけないのか…。
「さっきはお尻ぺんぺん見逃してあげたんだからぁ、お昼はあんたのおごりでお願いね、くくくく」
悔しくて、奥歯に力が入る。無言で踵を返す。上着を取りに、更衣室のある方向へ踏み出した私の手を、西村が乱暴に掴んできた。
「どこ行くのよ?エレベーターは、あっちよ」
「こ、この格好のまま、行けと?」
意地の悪い笑みを浮かべながら、二人は首を縦に振って、私を絶望させた。

仕方なく、エレベーター方向へ向かう。こんな格好を、人目に晒すのは、たまらなく恥ずかしい。だけど、この二人の前でグズグズしていたら、それこそ余計に酷い仕打ちを言い出しかねない。
足早にほんの三歩、四歩も歩かされただけで、私は当惑してしまった。窮屈すぎるミニは、一歩ごとにずり上がっていくような感触に襲われるのだ。生地の端を掴んで戻しながら、小幅で歩く私の前に、西村が立ちふさがってきた。
「ずいぶん歩きにくそうね。これじゃあ私たちのランチタイムが終わっちゃうわ。ねぇ、いい考えがあるの」
西村の手の中には、昨夜私の制服をズタズタにしたのと同じ、黒い裁ちバサミが握られている。私は身体を硬直させた。
「な、何をするんですか!」
制止する間もなく、西村が私のミニの生地の端、右足の辺りを摘まむと、ハサミを潜りこませてきた。ザク、ザクっと、ハサミが走る。
「ふふ、これで少し歩きやすくなったでしょう?」
「ああ、こんな…」
スカートがずり上がることはなくなったが、ただでさえ非常識なほど短いタイトスカートに、四センチほどのスリットが入って、いよいよ私のファッションは異様で、挑発的なものに仕立て上げられてしまった。

1階のレストランフロアは、本来は二十以上もの店舗を構えており、この複合オフィスビルで働く社員達の胃袋を満たしていた。だが、新型ウィルスの蔓延以来、店内での飲食は停止されており、テイクアウトのみでの営業となっている。それも、営業しているのは全体の三割程度の店しかない。
そのせいか、店は両方、混んでいた。それぞれ五分以上は待たされた。その間…通り過ぎるサラリーマンから浴びせられる無遠慮な視線が、突き刺さるように、痛い。
オフィス内の同僚たちは(まだ多少なりとも面識があるせいだろうか)、チラチラと見てくるだけだった。だけど、この見ず知らずの観衆たちの視線は、情け容赦がない。
まだ私と同じくらいの年齢であろう若い男性三人組などは私のこの破廉恥な出で立ちを見つけると、立ち止まって、指をさし、大きな声で軽口を叩いている。そこには、卑猥な単語も含まれていて、私を赤面させてくる。
(ああ、早く、終わって…あんまりにも、惨めで、恥ずかしい…)

「…お待たせ、しました」
「あんたさぁ、遅いんだけど?もうお昼休み半分過ぎちゃったじゃん、どうしてくれんのよ」
「す、すみませんでした、混んでいまして」
「もしかしてさぁ、その恰好見せびらかしたくてその辺ほっつき歩いてたんじゃあないのぉ?やめてよねぇ、会社の品位に関わるからさぁ、くくく」
「そんなことは、していません…、失礼します」
私は、残りの昼休みの時間、トイレの個室に籠って、悔しさに泣いた。すがるように、スマホを見つめても、添田さんからの連絡は、まだなかった。

午後の始業時間にデスクに着席すると、すぐに笹山課長が声をかけてきた。
「おやぁ、笠谷さん、またちょっと今日は感じが違ってるねぇ。あれ、どこが違うんだろうねぇ」
「え、えっ、と、その、何でしょうか」
私の右隣、つまり添田さんの席に座って、課長は舐めまわすように視線を浴びせてきた。私はモニタの奥の二人の先輩社員の顔を見遣った。笑いをこらえられないというように、口元を抑えている。この二人、もしや課長にまで何かを…
「ん?いやぁ、どことなくこう、すんごくセクシーに見えるからなんでだろうなぁ、って思ってねぇ?」
添田さんのデスクに頬杖をついて、笹山課長は私の足元から顔にいたるまで、観察するように視線を這わせてくる。
「そ、そうでしょうか、あの特に、なにもありませんけれど…」
私は、オフィスチェアに座ったとたんにずり上がってしまったスカートの端を必死で伸ばしながら、取り繕う。だけど、運が悪いことに、無惨に切り込みを入れられたマイクロミニのスカートでは、私の腿がほとんど丸出しになって、晒されている。
課長はニヤニヤしながら、シャープペンの先で膝の辺りからスリットの最奥部までをツーっとなぞってきた。
「な、何をするんですか!」
あまりの暴挙に、私は叫んだ。ここは大手の総合商社だ。こんなあからさまなセクハラ行為など、今まで一度も体験したことも、いや聞いたことすらなかった。
「なに、このあたりとか、うちの制服ってこんなデザインだったけなぁ、と思ってねぇ」
「あ、あの、少し、汚れてしまったので、クリーニングに出していたのですが、お店が休業してしまって、それで、自分の手持ちのものを履いてきてしまいました…あの、やはり、問題でしょうか」
「ふーん、なるほど。つまり、これは君の私服なわけだ。ふふふ、意外だなぁ、笠谷さんって、普段着は結構大胆なんだ?まぁ、いいんじゃないか、今は非常時だし、人事部も制服くらいでとやかく言わんだろう、気にすることはないさ」
「…はい、ありがとうございます…」
笹山課長はようやく立ち上がって、自席に戻っていった。深いため息とともに、身体の芯から脱力してしまった。
「ふふ、うまく交わしたわねぇ。ほんとに嘘が上手だこと。感心しちゃうわ」
「ほんとですよねぇ、でも課長、ずいぶんこの子のこと気に入っちゃったみたいですよぉ。クビにしたくてもできないじゃないですかぁ?」
間違いない、この二人は、笹山課長に何かを吹き込んでいる。どこまでの情報が共有されてしまったのか、それは分からないが、私が、抵抗できない存在であること、それを知って、早速探りを入れに来たのか…。こんな卑劣な男が添田さんの上司だなんて。そして添田さんを危険な国へ、こんな最悪なタイミングで行かせた、張本人。私は、悔しくて、顔を真っ赤にしてしまった。

午後は、笹山課長も、西村も前島も、打合せで離席がちだったので、幸いそれ以上恥ずかしい目に合わされることはなかった。私は、とにかく人目を引かないように、極力立ち上がることもしないで、デスクで黙々と業務をこなした。その間、プライベートのスマホにも、会社のメールアドレス宛にも、添田さんからの連絡は、なかった。

終業時間の十七時半になった。特に残業をするような支持は受けていないが、派遣社員は退勤時には打刻時間の確認のため、「勤怠確認表」なる書式に正社員のサインをもらう必要があった。添田さんがいないので、私は震える足取りで笹山課長のデスクへ向かった。
「あの、勤怠の確認を、お願いします」
「おぅ、ご苦労さん。そうだったな、どれどれじっくり確認しようか」
サイン一つする間にも私の腿のあたりを視線が舐める。堂々と、悪びれることもなくイヤらしい目線で見つめてくる。早く、早くしてよ、お願いだから…。
ようやく署名した笹山課長から書類を受け取る。
「…あの、添田さんが戻られるまでの間は、私は、また休業ということに、なりますよね?」
「あ、笠谷さん、帰っちゃうの?笹山課長、今日、笠谷さんに色々手伝ってもらって、私たちとっても助かったんです。彼女、すごく有能なので。明日以降も出社してもらうことでよろしいですよね?」
「えっ…でも」
「そうだな、その方が笠谷さんもいいだろう。こう休業続きだと収入のほうも大変だろうからね。明日も、よろしく頼むよ、ふふふ」

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