里穂は、権田に抱えられながら、浴室に連れられた。獣の臭気にまみれた里穂の肌を、権田は自らの手で念入りに洗い清めた。里穂は、ショックのあまり、言葉を発することもできず、ただ権田に身を任せていた。
「すまない里穂。情けない話だが、実のところ私は娘に頭が上がらなくてね。あの子の母親は、お前がこの屋敷に移ってくる少し前に家を出て行ってしまった。あの子が不憫で、つい甘やかせすぎたのか、気付いたころには、もうモンスターになってしまったんだ。特に、私がお前のいる学園を買収するといった頃から、いよいよ手が付けられなくなってしまってな…多分、お前への嫉妬があったんだろう」
身勝手極まりない男の言い訳ではあったが、極度の恐怖に神経をすり減らされた女にとって、目の前の男はまるで救世主のように映るのだった。
自分を潤んだ目でうっとりと見つめる里穂の様子を見て、権田は内心ほくそ笑んだ。
(それにしても、こんなにうまく嵌るとはな…我が子ながら恐ろしい)
屋敷に里穂が転がり込んできてからこれらの展開は、一から十まで全て、英玲奈が描いた筋書きだった。そもそも、犬が人間の女に欲情して、飼い主の合図で襲い掛かるなどというのは、完全なデタラメであった。麻薬成分などというのも大ウソで、ただ単に練乳が好物になるように飼育していたにすぎない。練乳を口にした後に、メス犬と交尾をさせるということを何度も繰り返させる。そうすると条件反射というやつで、練乳を口にすると自然と勃起反応を示すようになるのだ。
さも権田の身にも危険が及ぶようなふりをしているが、よく訓練されたこれら番犬が主人である権田に襲い掛かることなど、あり得ない。
こうして、悪魔のような娘の力を借りて、権田は里穂を精神的に掌握することに成功した。後は、約束どおり娘の願いを叶えてやる必要があった。とはいえ、東大は国立大学だ。多額の寄付で押し込むことはできない。英玲奈は極めて頭のいい少女ではあったが、受験勉強のために机に座っていることなど、到底できない性分だった。
(あの方法しかないな…)
その日、権田は里穂を自分の寝室のベッドに連れ込み、情熱的なセックスで里穂を虜にした。死の恐怖を経てから体験する交尾は、里穂をいつになく狂わせた。何度かの絶頂を経て果てた二人は、布団の中で固く身を寄せ合っていた。
「里穂、すまないが、なんとか娘を納得させたいんだ。あいつを東大にいれるために、協力してくれ。でないと、あいつはまた、お前にどんな危害を加えるか…」
「…わかりました、なんでもします。でも、私、何をしたら…」
権田は、自らの計画を語った。学園の経営者になって以来、権田は自らの人脈も駆使して、文部省の関係者とパイプを持ち始めていた。その中で、まだ四十代前半と若いが次期事務次官候補と目されている男と接触の機会を持っていた。何度か酒を飲みかわすうちに、その男が異常なほどの好色家であることが分かったのだ。
「名前は矢永、という。その男は、国立大学の入試問題作成の際のガイドラインの策定を取り仕切っている。いくつもの参考問題がレベル別にリストアップされた資料が存在していて、東大はそのうち最高レベルのものをベースに実際の入試問題を作ってくる。当然、その情報をもとに試験対策をすれば、超最短距離で合格にたどりつけるだろう。この男、矢永なら、そんな資料を持ち出せる立場にあるらしい…」
「つまり、私が、その男に、身体を差し出せば、受験問題が手に入る……ということですか?」
「すまない、こんな方法しかないんだ」
「構いません。でも、約束してください。それが終わったら、どうか私をあの子から守ってください。もう、あんな思いは、絶対にさせないで…」
「約束するよ。あいつはもうどこかで一人暮らしをさせる。お前は安心してここで暮らせばいい」
「ああ、繁晴さん、信じても、いいんですよね?私、裏切られるのはイヤ。もう、傷つけないで…」
哀れっぽくすすり泣きながら、自分の胸の上を涙で濡らす姪の姿に、権田は改めて欲情した。もう正午すぎだというのに、権田は再び勃起したペニスを、里穂のヴァギナに差し入れた…。